- 著者
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大井 学
- 出版者
- 全国障害者問題研究会
- 雑誌
- 障害者問題研究 (ISSN:03884155)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, pp.110-118, 2004-08
- 被引用文献数
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3
高機能広汎性発達障害をもつ人の語用障害は深刻なコミュニケーションの困難をもたらす。子ども時代にこの面での適切な支援なしに成人した青年たちが示す困難は、安定した就労や円満な社会生活を脅かしかねない。高機能広汎性発達障害にともなう語用障害には、それとは気づきにくい「見えない」ケースが多い。また、彼らの語用障害はコミュニケーションのすべての領域に広がっており、かつ他の面の発達によって克服されがたい根深さを備えている。さらに、ヒトのコミュニケーションのしくみの本質的な部分での欠陥も示唆される。こうした特質により彼らの語用障害は他者とのコミュニケーションに致命的な打撃を与えることもまれでない。語用障害を補償し会話の崩壊を修復する努力が、彼らとの相互理解にとって不可欠である。この障害をもつ人どうしのコミュニケーション体験の保障、INREALを用いた他者とのコミュニケーションの分析が支援として有用である。