著者
菅田 良仁 佐伯 敬一
出版者
関西鍼灸大学
雑誌
関西鍼灸短期大学年報 (ISSN:09129545)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.148-152, 1989-04-01

小学校6年の電磁石の教材で、鉄心として用いる釘をアルコールランプで赤熱してから使用するように指示されている。これは何のためだろうか。筆者等は消磁のためであるとしてきた。鉄は770℃以上で磁化を失うので、その温度以上にあげるためと解していた。前回報告したものでも焼きなまし温度を高温にする程残留磁力が減少することを報告し、1,000℃で焼きなましたものは殆ど残留磁束密度Brが0となることを示した。今回金属顕微鏡を用いて鉄釘の金属組織を研究したところ、残留磁束密度Brの原因と考えられるのは2種あり、1つは内部歪であり、他は焼き入れ組織であることが判った。前者を除くのは必ずしも高温である必要はなく、アルコールランプ程度又はガスバーナー程度の温度で十分である。後者は高温からの急冷により生ずるので、ゆっくり冷却するにはそのための装置を必要とする。授業等での実験では、ガスバーナーで赤熱することで前者の歪がとれ且つ高温からの焼き入れを避けることができ、かなりBrを減少させることができる。このことは、装置と手順の簡便さを考慮し、十分な熱処理効果であり、Brが若干残るのはやむを得ないと考える。

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