著者
菅田 良仁 佐伯 敬一
出版者
関西鍼灸大学
雑誌
関西鍼灸短期大学年報 (ISSN:09129545)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.56-62, 1987-04-01

電磁石の教材は、現行の小学校学習指導要項(昭和53年)では、6年生で初めて扱われている。その中に「電磁石の強さは、電流の強さや導線の巻き数などによって違う」と記されている。各社の教科書の取り扱いは種々であるが、電磁石の強さは吸引力と理解されている。吸引力Fの理論式は、文献によると、F=(φ^2)/(2μ_OS)と表現され、磁束φ、極の面積S、真空の透磁率μ_Oに関係している。教材として使用されるU字型電磁石の市販品を用いて、上の理論式が適応するか否かの検討を行なった。そのため磁束計を使用して、電流と磁束の関係を求め、ついで電磁石に錘のついた鉄片を吸引させて、吸引力を測定した。磁束と吸引力の関係を求めると、上記の理論式が成立しない場合があった。その原因は、磁極と吸引する鉄片との間の僅かな隙間にもとづくことが判明し、磁極を削り直して理論式が精度よく成立することが確かめられた。以上により、実験的に混乱している電磁石の教材の問題点の解明に役立つ研究ができたので報告する。
著者
菅田 良仁 佐伯 敬一
出版者
関西鍼灸大学
雑誌
関西鍼灸短期大学年報 (ISSN:09129545)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.148-152, 1989-04-01

小学校6年の電磁石の教材で、鉄心として用いる釘をアルコールランプで赤熱してから使用するように指示されている。これは何のためだろうか。筆者等は消磁のためであるとしてきた。鉄は770℃以上で磁化を失うので、その温度以上にあげるためと解していた。前回報告したものでも焼きなまし温度を高温にする程残留磁力が減少することを報告し、1,000℃で焼きなましたものは殆ど残留磁束密度Brが0となることを示した。今回金属顕微鏡を用いて鉄釘の金属組織を研究したところ、残留磁束密度Brの原因と考えられるのは2種あり、1つは内部歪であり、他は焼き入れ組織であることが判った。前者を除くのは必ずしも高温である必要はなく、アルコールランプ程度又はガスバーナー程度の温度で十分である。後者は高温からの急冷により生ずるので、ゆっくり冷却するにはそのための装置を必要とする。授業等での実験では、ガスバーナーで赤熱することで前者の歪がとれ且つ高温からの焼き入れを避けることができ、かなりBrを減少させることができる。このことは、装置と手順の簡便さを考慮し、十分な熱処理効果であり、Brが若干残るのはやむを得ないと考える。