著者
高橋 国士
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.19-26, 1998-03-30

現代のように多様なメディアがなかった時代, 音楽情報の流通は, 演奏や伝承によるほか, 楽譜というメディアに記され, 出版されることによってのみ行われた.そのため本研究では, 古典派を代表する音楽家の一人モーツアルトのを取り上げ, その音楽伝播に果たしたメディアとしての楽譜の役割を明確にすることを目的として, 文献研究を行った.音楽伝播における楽譜の役割は, 生存中と没後に分けて考察した結果, 次の知見が得られた.その生存中の音楽伝播(2次元的伝播)は, 18世紀末から音楽が宮廷, 貴族社会から, 市民社会へ浸透したことが大きな要因であったといえる.これによって新たな音楽市場が発生し, 音楽を介しての経済活動が, 作曲者から出版社などの手に移り, 販売された楽譜は出版地だけでなく, 遠隔地にまでおよぶことによって, 音楽情報の流通の範囲が拡大されるようになった.さらに, 没後の研究成果と, これを基にした系統的な作品全集の出版は, 時間経過を伴わせて音楽情報の流通(3次元的伝播)をいっそう加速させている.

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こんな論文どうですか? モーツアルトの音楽伝播におけるメディアとしての楽譜の役割,1998 http://ci.nii.ac.jp/naid/110001092288

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