著者
武田 正則
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.17-28, 2012-03-30

学校教育をめぐる状況は大きく変化し,学校のみで教育課題全体を解決していくことには限りがある.そのため,学校・家庭・地域等の連携と協働が従来に増して求められ,教育目標の達成のために「協働の仕組みづくり」が課題となっている.本稿では「協働の仕組みづくり」を念頭に置き,子どもらに授業を通じて「参画と協働」を理解させるために参画型協働学習に焦点をあて,学習ファシリテーションの理論的背景を究明する.その方法として,知識創造・参画・協働に関する理論から場の形態(個人知・集団知・組織知),場の能力(知力・参力・協力),場の拡大(情報通信技術による参入)を考察した.結論として,学習ファシリテーションとは問題解決のためのマネジメントデザインと協働促進のためのコミュニケーションデザインの両面を担う学習方法であること,その指導においては5つのファシリテーションスキル(学びの場のデザイン・対人関係・構造化・合意形成・情報共有化)が必要になることを明らかにした.
著者
山本 利一 本郷 健 本村 猛能 永井 克昇
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.3-12, 2016 (Released:2017-02-10)
参考文献数
31

本研究は,プログラミング教育に関する教育的意義やその効果を先行研究から整理し,今後それらを推進するための基本的な知見を得ることを目的とする.そのために,初等中等教育におけるプログラミング教育の位置づけを学習指導要領で確認した後,先行研究を整理した.その結果,プログラミング教育の教育的意義や学習効果は,①新たなものを生み出したり,難しいものに挑戦しようとする探究力,②アルゴリズム的思考,論理的思考力,③物事や自己の知識に関する理解力,④自分の考えや感情が発信できる表現力や説得力,⑤知恵を共有したり他者の理解や協力して物事を進めたりする力,⑥プログラミングを通して情報的なものの見方や考え方を身に付けることができる,ことであることが示された.
著者
宮田 仁 大隅 紀和 林 徳治
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.3-13, 1997-03-31

Logoによるプログラミングの学習で伸長した問題解決能力が, プログラミング以外の他の状況に転移するかという問題を, 指導方法との関係で分析した. その結果, 間題解決のプロセスを重視したアプローチでプログラミングを指導した場合, 間題解決能力の転移が起こりやすいことが「ハノイの塔問題」という解析的課題において実証された. プロセスを重視したアプローチでは, (1)構造化されたワークシート, (2)メタ認知を促進する教育的介入方法, (3)社会的状況場面で学習者がリフレクト(内省)できる学習環境の準備が必要であり, 具体的方法としてメタ認知促進カード(Metacognitive Prompt Card)をペア学習で使用した.
著者
谷口 知司 三宅 茜巳 興戸 律子 有薗 格
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.17-24, 2006-06-01

終戦直後文部省は,占領軍総司令部のもとで戦時下教育の一掃に力を注いでいた.占領軍総司令部は,アメリカの教育専門家をスタッフとしてその目的のために民間情報教育局(The Civil Information and Education Section:略称CIE)を置いた.木田先生は,昭和21年に文部省に入省された.この時期に若手文部官僚として教科書局調査課に在籍し,CIEスタッフとともに社会科特別教科書『民主主義(上)(下)』の編集に係わった.この教科書は昭和23年から24年にかけて発行され,昭和28年頃まで使われ,戦後の民主主義教育に大きな役割を果たした.本稿では,木田宏先生の二編のオーラルヒストリーをもとに,木田先生と教科書「民主主義(上)(下)」との係わりについて,執筆の経緯,教科書に漫画を掲載したこと,執筆者について,大江健三郎のこと,共産主義の取り扱いの各項目で考察した.
著者
林 知己夫
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.6-10, 1986-03-31 (Released:2017-06-17)

コンピュータを教育の場に持ちこむ問題を考える場合、二つにことが考えられる。一つは教育に関する情報処理(データベースを含む)のためにコンピュータを活用することであり、もう一つは、初中等教育の段階でコンピュータ教育を実際に行う場合である。前者は当然用いるべきであるが、後者に対しては慎重に考察する必要がある。なぜならば、コンピュータ教育そのものが、望ましい科学的精神の発達に悪影響を与える可能性があるからである。従って、コンピュータ教育のあり方を研究する前に、コンピュータ教育の与える影響の研究が先行すべきで、これを踏まえた上で、コンピュータ教育の諸問題を研究するのが望ましいという主旨が論じられている。
著者
菅井 勝雄
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.16-22, 1987-06-30 (Released:2017-06-17)
参考文献数
9

今日、情報化社会の進も中で、コンピュータが学校教育に入り、それとともに授業が変ろうとしている。そこで、本稿では、心理学における「行動的モデル」から「認知的モデル」への科学のパラダイム変換によって、これまでの伝統的な「教師→学習者伝達モデル」から、新たな「学習環境モデル」への授業モデルの移行が、理論的な観点から検討される。あわせて、情報技術と理論モデルとの密接な関係が示される。
著者
加藤 由樹 加藤 尚吾 千田 国広
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.5-12, 2011-10-20
被引用文献数
1

本研究では,携帯メールで相手に返信をするタイミングについて,大学生224名を対象に調査を行った.具体的には,相手から4種類の感情(喜び,悲しみ,怒り,罪悪)を伝えるメッセージが携帯メールで届いた場面において,それぞれの返信までに間をあけるかどうかの程度を,彼らに6段階で評定するように求めた.また,その理由についても回答を求めた.その結果,4種類の感情場面のそれぞれにおいて,場面に合わせて相手の感情や自分自身の感情を操作するために返信のタイミングを工夫していることがわかった.その一方で,返信のタイミングの工夫と感情の操作に関する捉え方には個人差があることもわかった.
著者
椿 美智子 小林 高広 久保田 一樹
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.15-27, 2010-03-25

品質を改善するために,様々な分野で伝統的にPDCAサイクルが用いられており,さらにスピードが要求される現代においては,チェックから始めるCAPDサイクルによって質・効率を上げる場合があることが示され始めている.一方で現在,教育問題においても学習の質・効率を非常に求めるようになってきている.本研究では,学習型PDCAあるいはCAPDサイクルを用いることによって,自分で学習テーマを決め,目標を決め,自分の実力を考慮した上で,目標にどのようにしたら近づくかの方法論を考えており,この構造が効率よく実力を伸ばすことに効果を上げている.本研究では,この効率よく伸びるサイクルとは,どのようなサイクルかを詳細に分析した成果を示している.
著者
水島 賢太郎
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.48-57, 1989-10-31

今日、ソロバンを電卓と同種の計算道具であるという見方に立ったソロバン教育は、あまり意義が無いと思われる。しかし、ソロバンの主たる機能をメモリー(記憶装置)とみれば、コンピュータの概念およびプログラミング指導へのソロバン利用の可能性が生まれる。この立場からソロバンとコンピュータ教育について考察した。その考察に当たっては、情報と教育について原点に立つという意味で、認知科学的視点を取り入れた。
著者
山本 利一 大関 拓也 五百井 俊宏
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.23-29, 2008
被引用文献数
2

rights: 日本教育情報学会rights: 本文データは学協会の許諾に基づきCiNiiから複製したものであるrelation: IsVersionOf: http://ci.nii.ac.jp/naid/110007123453/本研究は,学習内容や学習の進め方をコンピュータを活用して整理し,生徒自身が見通しを持った学習計画を立案する授業実践報告である.「ロボット製作」を題材として,学習すべき項目の検討,作業計画など,コンピュータを活用してマインドマップを作成・修正する授業展開である.実験授業の結果,計画設計能力,思考整理能力の向上が見られた.また,生徒は,マインドマップやそれらを描くソフトウェアに対して興味・関心が高く,他の分野への転移の可能性があることも確認できた.
著者
服部 晃
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.31-36, 2006-06-01

現在,わが国の地方教育行政は,政治的中立性と継続性・安定性を確保して地域住民の意向を反映するために,地方公共団体の長から独立した合議制の執行機関である教育委員会により行われている.第二次世界大戦の終戦後に設置されたこの制度は,60年を経過して時代の進展と社会の変化から多くの課題を生み,その制度の在り方について様々な指摘を受けている.戦後の地方教育行政の組織について,設置当時の時代背景や経緯を昨日の出来事のように生々しく語られた「木田宏先生のオーラルヒストリー」から,地方教育行政の今日的課題に対する方策と,教育委員会制度の在り方を考える貴重な資料を,教育行政実践者の立場から提示する.
著者
加藤 尚吾 加藤 由樹 島峯 ゆり 柳沢 昌義
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.47-55, 2008-12-05
被引用文献数
3

本稿では,携帯メールコミュニケーションにおける顔文字の機能について,コミュニケーションの相手との親しさの程度による影響を調べるため,女子大学生32名を被験者にした実験を行った.結果から,親しい間柄に対して送信した携帯メールで顔文字を使用する場合,顔文字以外の文字数が減る傾向が示された.また,相手に謝罪する場面で親しい間柄に送信した携帯メールでは,親しくない間柄に比べて,言葉で表された謝罪が有意に少なく,顔文字が謝罪の言葉に代替される傾向(メール本文代替機能)が示唆された.更に,親しい間柄に送信した携帯メールでは,親しくない間柄に比べてより多くの種類の顔文字を使う傾向(感情表現機能)が見られた.
著者
片山 章郎
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.13-20, 2002-02-28

学生の論理的文章作成能力が低下しているので,論理的文章の作成を早い時期から慣れさせる必要があると思った.そこで,1年前期に開講している「情報科学」で手書きによるレポートをほぼ毎週課し、添削して返却することにした.当初のレポートは文章や論理展開等にいろいろな問題があったが,添削する際に必ずほめるコメントをつけたり,課題に対する解説をしたりすることにより,文章が改善する点もあった.しかし,論理構成の向上は不十分であり,今後も新入生に論理的文章を作成させる必要があった.また,新入生の文章作成に対する意識も把握するために,最後の授業時にアンケート調査をした.その結果,新入生は論理的文章作成に慣れていなかったために,レポートに大きな負担感を持っていたことがわかった.ただし,レポート提出をよいことと思った新入生は,学習意欲が高まったり,文章作成の負担感が軽減したりしていた.
著者
山本 利一 山内 悠
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.17-26, 2018 (Released:2018-09-30)
参考文献数
10

2020年全面実施の小学校学習指導要領では,初等教育においてプログラミング学習が必修化される.プログラミング学習は,各教科の目的を達成する手段として効果的に活用される必要があり,それらの事例の蓄積が求められている.そこで本研究は,小学校第1学年の特別な教科「道徳」において,プログラミング学習の順次処理と「順番の大切さ」を組み合わせた指導過程を提案し,実践を通してその効果を検証することである.実践の結果,児童は,PETSを活用することでプログラミング(順次処理の学習)に積極的な取り組みを見せると共に,順番の大切さを学びとっていた.しかし,グループ活動は,グループにより活動の質が異なるため,教員の声かけや支援が大切であることも確認された.
著者
高山 草二
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.11-19, 2000-03-31 (Released:2017-05-27)
参考文献数
15

ビデオゲームの面白さとその個人差を実証的に検討するため, ゲームで遊ぶ動機とメディア嗜好性を小学生について調べた.因子分析の結果, 道具的な動機である「暇つぶし」「逃避」の他に, 「挑戦」「コントロール」「空想」「好奇心」など, 内発的動機づけ理論において提案されてきたすべての側面がみられた.これらの動機が重なることで面白さが増していた.個人差の分析の結果, 内発的動機または道具的動機が中心の類型, どの動機も低い否定的な類型など, 多様な類型がみられた.一対比較法によるメディアとの嗜好の比較から, ビデオゲームは双方向性をもったテレビとしてとらえられており, 特に, ビデオゲーム特有の面白さとして「コントロール」と「空想」がメディアの双方向性から生ずることが示唆された.ゲーム様式のCAIに関して, これら結果の意義を検討した.
著者
渋井 二三男 高橋 三雄 柿岡 明 石井 宏
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.49-56, 1995-07-31 (Released:2017-05-31)
参考文献数
5

企業における情報処理教育(本調査では,「OA・情報関連教育」の語を使用)の現状を把握し,企業における情報処理教育の在り方を調査研究することにより,今後の施策形成の一助とすることを目的に実施した.分析の結果,(1)OA・情報関連教育は,73.4%の企業で実施されているが,その目的・内容は,伝統的な「OA教育」の範疇に従うものであり,情報の高度利用を念頭に置いたものとはいえない.(2)取締役・部長クラスに対する教育を実施している企業は少数であるが,今後は,かなりの企業が重視する意向を示している.(3)OA・情報関連教育を実施中の企業では,教育の効果に疑問を呈する意見が強く,非実施企業では実施すべき教育内容が不明確であることを問題視する意見が強い.(4)14項目の知識・能力分野によって(注)「情報リテラシー教育」観を質問した結果,(I)理系-文系軸(II)SE-プログラマー軸,(III)実務家-理論家軸の3つの因子で58.8%まで説明できることが分かった.
著者
及川 浩和 加藤 直樹
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.31-37, 2009-09-15

日本語を学ぶために別科に入学した中国人留学生を対象として,コンピュータの漢字変換機能に着目し,正確な読みの指導を中心とした読解・聴解能力を育てるための5つの学習活動を取り入れた日本語学習指導法を提案する.第I報では,コンピュータに対する不安度,読みの誤り,文字を手がかりにした意味の理解度について実態調査を行い,学習が成立するための基礎資料とし,学習プロセスモデルを構築するまでの過程を述べた.本稿では構築した学習プロセスモデルにおける学習状況を明らかにするため,これまでに授業実践した結果と評価について述べる.授業実践の結果,漢字変換機能を活用した学習には成果が見られ,学習者にとってこの学習活動は肯定的に受け止められた.
著者
高田 英一 高田 悠二
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.3-14, 2012-11-30

現在,わが国の大学では,近年の大きな経営環境の変化に対応するために,教職協働の推進と,そのための大学職員の能力向上の必要性が叫ばれている.特に,国立大学では,大学評価への対応の重要性が増しているが,それに携わる職員に必要な能力に関する議論はほとんど行われていない.そこで,本稿では,法人評価における教育分野の達成状況報告書の作成業務を対象として,教育情報の収集・蓄積・管理・分析等の業務に必要な職員の能力に関する現状と課題を検討した.その結果,当該業務には,多様なレベルの教員・職員が多様な業務に関与しており,それら業務の遂行には,大学評価に関する専門的知識だけでなく,大学の活動全体に関する幅広い知識など重層的な知識・能力が必要であることが明らかとなった.
著者
平山 敏弘 長谷川 長一 やすだ なお 大西 荘一 井上 紀明 井上 善勝 三木 啓一郎
出版者
日本教育情報学会
雑誌
教育情報研究 : 日本教育情報学会学会誌 (ISSN:09126732)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.3-10, 2011-07-04

NPO日本ネットワークセキュリティ協会教育部会では,良質かつ社会のニーズに適合したセキュリティ人材育成のための実証を行い,会員ならび社会に還元することを目的とした活動を行っている.その中で,情報セキュリティ基本教育実証WGは,情報セキュリティ基本教育の普及と社会貢献への意識向上,および地域格差是正への取り組みを目指し,2006年度に設立された.具体的な活動としては,情報セキュリティ基本教育を実証するモデルケースとして大規模な産学連携では初となる,岡山理科大学と日本ネットワークセキュリティ協会との提携による東京からのリモート授業を平成19年度より実施している.当論文は,その実証を通じて得た経験と分析結果より,今後の講義形態の1モデルであるWeb環境における遠隔講義の方向性を検証するとともに,IT人材育成に向けての教育機関における実践力向上のための産官学連携の重要性と新たな取り組み例について提言するものである.