著者
小谷 凱宣
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.245-262, 1996
被引用文献数
1

1996年4月の「ウタリ対策に関する有識者懇談会報告書」の提出により,アイヌ研究の推進は,より重要かつ緊急になってきた。有識者懇談会報告書の内容は,ウタリ協会の「アイヌ新法」制定要求に対する具体的措置の第一歩と考えられ,その意味でアラスカ先住民の先住権を全面的に承認したアメリカ連邦政府現地特別委員会報告に対比できる。そして,現地特別委員会報告にもとづいて制定された「アラスカ先住民諸要求解決法」(ANCSA)」は「アイヌ新法」内容のモデルになっていると解釈できる。本稿ではアラスカ先住民の先住権などに対する行政措置を決めた現地特別委員会報告(1968)とANCSA(1971)の内容を紹介する。それらに照らして,有識者懇談会報告書の内容を検討し,アイヌ新法制定要求内容の三本柱のうち,文化振興策のみが触れられただけで,先住権承認とアイヌ民族基金設置要求については触れられていないことを指摘する。ついで,有識者懇談会報告書で強調されているアイヌの総合研究の推進に焦点をおき,アイヌの博物館コレクションを中心に,いままでのアイヌ研究の問題点を指摘する。そのうえで,1980年代前半から実施してきたB・ピウスツキのアイヌ資料研究と在北米アイヌ関係資料の現地調査の結果にもとづき,アイヌの総合研究の必要性を具体的の考慮,提案する。未刊行資料の再発掘やその意義の再検討は,狩猟民文化が世界的に変容しつつある昨今,緊急を要する課題であると考えるからである。

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こんな論文どうですか? アイヌ研究の問題点と研究の緊急性(<特集>現代の「狩猟採集民」)(小谷 凱宣),1996 https://t.co/77VwUzQuWU
こんな論文どうですか? アイヌ研究の問題点と研究の緊急性(<特集>現代の「狩猟採集民」)(小谷 凱宣),1996 https://t.co/77VwUzQuWU

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