著者
藤田 真理子
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.58-85, 1988-06-30

本論は、1979-80年に行った、米国カリフォルニア州サンフランシスコ近郊に住む65歳以上の白人高齢者で、特に、高齢者向けの活動に積極的に参加している人々を対象とした調査を元に、老後の適応について象徴人類学の立場から考察した。ギァーツが提唱するように人間を「意味付ける動物」と定義し、高齢者がどのように、意味と象徴の体系を使って、彼らのとりまく世界、老後の活動を解釈するかということを中心に分析した。高齢者の日常会話を分析すると、workとmiddle classが、彼らの行動を意味付けるキー・シンボルとして浮かび上がる。この2つのシンボルに反映されているのは、独立性、主体性、勤労精神、ボランティア精神といったようなアメリカ文化の中核とされているものである。この2つのシンボルは、密接に絡まり合って高齢者の老後の生活を意義あるものとしていくと同時に、ディレンマも形成していく。このことは、無償奉仕活動に従事することの意味に的確に表れている。無償奉仕活動は、高齢者社会で社会的ステータスを築くと共に、人生の成功者という評価をもたらす。しかし、このことは、高齢者の労力に対する金銭的報酬を犠牲にするものである。2つのシンボルは、また、高齢者と他の年齢層との関係、及び、高齢者間の関係も規定する。

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