著者
富樫 一巳
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-8, 1989-02-25
被引用文献数
4 30

マツノマダラカミキリは1年または2年かかって羽化する。その発育の相違を産卵時期の異なる個体群を用いて調査した。その結果,6, 7月に産卵された個体群では,11月までに多くの個体が4齢幼虫になって材内蛹室のなかにいた。翌春それらは再摂食せずに6月までに蛹化した。8月に産卵された個体群では,11月に3齢幼虫(60∼70%)または4齢幼虫(30∼40%)になるが,それらの30∼50%の個体しか材内蛹室を作らなかった。翌春,10∼40%の幼虫が再摂食した。そして,90%以上の個体が産卵の翌年に羽化した。9月に産卵された個体群は11月になっても1∼3齢幼虫であり,かなりの幼虫が靱皮部にいて摂食を続けていた。翌春幼虫は摂食を再開し,海岸林の場合60%の個体がその年に羽化したが,山地林の場合6%の個体しか羽化できなかった。発育に2年を要する個体は,産卵された年に1, 2齢幼虫で越冬し,翌年に3, 4齢幼虫まで発育して再び越冬し,その翌年に羽化した。最後に,本種の生活史の調節機構に関する仮説を提出した。

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