著者
富樫 一巳
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.442-448, 1989
被引用文献数
3

材線虫病に自然感染したクロマツの衰弱時期と枯死過程の関係を明らかにするために, 1林分の全クロマツに対して樹脂滲出能の調査を5月から10月まで毎月行った。また,マツの葉色の調査を6月から10月までは毎週, 11月から5月までは毎月1~3回行った。 6月から9月までの間に衰弱しはじめたマツの場合,その大部分は衰弱した年に全葉が茶色~赤茶色になって枯れた(パターンA)。 枯死過程の完了までの平均時間は8, 9月に衰弱しはじめたマツより6, 7月に衰弱しはじめたマツのほうが長かった。 9月または10月に衰弱しはじめたマツの場合,衰弱した年にほとんどすべての葉が変色し,翌年全葉が茶色~赤茶色に変色するものがあった(パターンB)。 8月から10月の間に衰弱しはじめたマツには,衰弱した年に一部の葉が変色し,翌年になってほとんどの葉が変色し,その後すぐに全葉が茶色~赤茶色になる場合が見られた(パターンC)。 10月に衰弱しはじめたマツのうち少数のものは,衰弱の翌年の4月に一部の葉が変色し,遅くとも6月中旬までに全葉が茶色~赤茶色に変色した(パターンD)。
著者
春日 速水 井口 和信 松井 理生 富樫 一巳
出版者
樹木医学会
雑誌
樹木医学研究 (ISSN:13440268)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.174-179, 2010-10-31

シラフヨツボシヒゲナガカミキリ成虫の日周性を明らかにするために,北海道で7月下旬と8月下旬に日中約1時間ごとにトドマツとエゾマツの切株上の成虫数と行動を観察した.晴れた日と薄曇りの日には,成虫は午前中に切株に出現しはじめ,個体数は午後に最大となり,その後減少した.このことから,成虫は昼行性であることが示された.性比は雄に偏っていた.多くの成虫は単独またはマウントをしながら静止していた.雨天時に成虫は出現しなかった.25℃,16時間明期8時間暗期の条件下では,成虫の行動に明期と暗期の間で有意な差は見られなかった.これまでに研究されたヒゲナガカミキリ属3種の比較から,ある種が野外条件下で昼行性であるか夜行性であるかは光条件ではなく,活動に適した体温によって決まることが示唆された.
著者
福田 秀志 富樫 一巳
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ニホンキバチ共生菌のスギ丸太における繁殖に適した含水率は100~150%の間で、含水率がこれよりも低いあるいは高い条件では共生菌の長期間の繁殖は困難と考えられた。巻き枯らし木において、ニホンキバチは樹種・処理時期に関わらずほとんど発生せず、共生菌を持たないオナガキバチがヒノキ11 月処理木から主に発生した。カシノナガキクイムシの生態から考案した総合防除対策を行った結果、新たな被害木の枯死を激減させることができたが、穿入生存木の枯死を助長させる結果となった。
著者
富樫 一巳
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.1-8, 1989-02-25
被引用文献数
4 30

マツノマダラカミキリは1年または2年かかって羽化する。その発育の相違を産卵時期の異なる個体群を用いて調査した。その結果,6, 7月に産卵された個体群では,11月までに多くの個体が4齢幼虫になって材内蛹室のなかにいた。翌春それらは再摂食せずに6月までに蛹化した。8月に産卵された個体群では,11月に3齢幼虫(60∼70%)または4齢幼虫(30∼40%)になるが,それらの30∼50%の個体しか材内蛹室を作らなかった。翌春,10∼40%の幼虫が再摂食した。そして,90%以上の個体が産卵の翌年に羽化した。9月に産卵された個体群は11月になっても1∼3齢幼虫であり,かなりの幼虫が靱皮部にいて摂食を続けていた。翌春幼虫は摂食を再開し,海岸林の場合60%の個体がその年に羽化したが,山地林の場合6%の個体しか羽化できなかった。発育に2年を要する個体は,産卵された年に1, 2齢幼虫で越冬し,翌年に3, 4齢幼虫まで発育して再び越冬し,その翌年に羽化した。最後に,本種の生活史の調節機構に関する仮説を提出した。