- 著者
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本田 洋
羽生 健
- 出版者
- 日本応用動物昆虫学会
- 雑誌
- 日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
- 巻号頁・発行日
- vol.33, no.4, pp.238-246, 1989-11-25
- 被引用文献数
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4
走査型電子顕微鏡を用いてモモノゴマダラノメイガとマツノゴマダラノメイガ成虫の触角上の感覚器について形態, 数, 分布を比較検討した。観察に先立ち同一試料で検体の全面を観察できる特殊な試料固定装置を考案作製した。両種の触角からはBahm's bristle, s.styloconicum, s.trichodeum, s.chaeticum, s.squamiformium, s.basiconicum, s.auricillicum, s.coeloconicumの合計8種類の感覚器が見いだされ, これらの感覚器の形態および分布様式には性差あるいは種間差はなかった。一方, いずれの種においても, s.trichodeumは雌よりも雄に多く, その数は8,000〜8,500本(雄), 6,500〜6,800本(雌)であり, 逆にs.basiconicumは雄(760本)よりも雌(1,400本)に多く見いだされた。しかし, 残りの7種類の感覚器に関しては数の上での性差は両種にはみられなかった。以上の結果から, モモノゴマダラノメイガとマツノゴマダラノメイガは, すでにそれぞれの触角上の嗅覚感覚器の匂い物質に対する感受性は一部分化しているが, 感覚器の大きな形態的分化はまだ起きてないと結論した。