著者
蔵田 伸雄
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.35-40, 1998-09-07

今後出生前診断の普及に伴い、医療従事者の「助言」と我々各自の「優生的な指向」及び「自由な選択」の結果として、ある種の先天的な疾患をもつ患者の数が激減する可能性がある。選択的中絶は、「生まれてくる子が不幸」「家族に対する経済的負担」「障害児を出生前に中絶した方が、社会全体の医療費を節約できる」といった論拠によって正当化されることが多い。しかしこれらの理由にはいずれも問題点がある。選択的中絶を倫理的に許容できるのは、生まれてくる子に激しい苦痛がある、疾患に対する治療法がない、あらゆる可能な治療を試みても生後数年以内にほぼ確実に死んでしまう、両親が中絶を強く希望し医師もそれを了承しているといった条件のすべてを満たしている場合だけだと思われる。

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