著者
甲斐 克則
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.59-64, 1992
被引用文献数
3

安楽死や尊厳死を論じる場合、その言葉だけが先行して、結論が一人歩きしないよう注意する必要がある。そのためには、それらの概念内容を整理し、両者の共通点と相違点を明確にしたうえで、それぞれの許容性と問題性について考える必要がある。本稿では、患者の自己決定権と患者の意思を考慮しない他者決定との中間領域の中に、妥当な解決策を見出すべく考察を進める。まず、安楽死については、(1)純粋型安楽死、(2)間接的安楽死、(3)積極的安楽死、(4)消極的安楽死、に分類して考察する。とくに(3)では、日本の判例を素材として取り上げる。次に、尊厳死については、(1)患者の治療拒絶意思が明確な場合、(2)それが十分明確でない場合、(3)それが完全に不明確な場合、に分類して、アメリカの判例を参照しながら考察する。このような考察方法を通じて、さまざまな専門分野の人々が議論できる共通の基盤が作られることを期待したい。

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