著者
平川 晴久 原口 桂 林田 嘉朗
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, 2002-03-01

【背景】作業関連疾患の一つである高血圧性疾患の発症には、個人の生活習慣や感受性が大きく関与する。この高血圧の病態にはレニン-アンギオテンシン系及び一酸化窒素(NO)が、交感神経系と共に重要な因子と考えられてきた。近年、アンギオテンシンII(ANG II)とNOは相互作用を持ち、交感神経活動を調節している可能性が示唆された。【目的】塩分制限が交感神経活動に対するANG IIとNOの相互作用をどのように変化させるかを検討した。【方法】実験は、意識下のラビットを用い、3週間の塩分制限を行った群及び行わなかった群の2群について行った。NO合成阻害剤(L-NAME)とそれに続くANG II受容体拮抗剤(losartan)の投与を行い、腎交感神経活動を観察した。いづれの投与後も圧受容器反射の影響を除くため血圧は、コントロール・レベルに維持した。【結果および考察】塩分制限を行った群では、L-NAME投与によるNO合成阻害により、交感神経活動は増加した。この増加は、losartanの投与によるANG II受容体の抑制により消失した。これより、NO合成限害後の交感神経活動の増加は、ANG II増加によると考えられた。一方、塩分制限を行わなかった群では、NO合成阻害、およびNO合成阻害後のANG II受容体抑制のいづれでも交感神経活動は変化しなかった。【結語】塩分制限は、ANG IIを増加による交感神経活動促進、それと同時にNO合成の促進による交感神経活動抑制を引き起こす。この2つが相互干渉することにより、交感神経活動、血圧は維持されることが示唆された。

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塩分制限 交感神経系 アンギオテンシン NO ATII受容体の抑制 NO合成阻害

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