著者
安部 計彦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.187-194, 2005
参考文献数
6

乳幼児期に体験した虐待はその後の人生に大きな影響を及ぼし,心身症状を示す例も多い.未熟で無防備な子どもは,圧倒的な暴力で安全を脅かされ,長時間放置される中で,心身のバランスを崩しながら,歪んだ形でその場に適応している.その結果,虐待から逃れ,成長した後も人生の長期にわたって歪みは残り,心身のバランスは歪み,人との安定した関係を築けす,自他への暴力や攻撃的な言動が現れる.また他者から支配されることを嫌い,自他の人を信用していないため,援助関係の構築も困難になる.このような虐待が心身症状として現れるメカニズムやその対応法について報告する.筆者は長年児童相談所で,心理判定員および判定係長として子どもや家族の治療や心理的援助を担当し,また相談係長として介入や家族調整,地域や関係機関による援助体制の構築を行ってきた.また長年,心理治療の一つである箱庭療法について,九州大学病院心療内科の先生方と勉強会を続けてきた.今回はこれらの経験をふまえ,児童虐待と心身医療の関係について述べたい.

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