著者
辻 孝 澤井 照光 林 洋子 山田 義久 松本 博文 宮崎 拓郎 稲村 幸雄 長嵜 寿矢 中越 亨 綾部 公懿
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.24-29, 2002
被引用文献数
5

はじめに:手術後の肺塞栓症(pulmonary embolism:以下, PE)は致死率の高い重大な合併症であり, 塞栓子の多くは深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:以下, DVT)に由来する.本邦では術後の発生率が低いために, 予防法に関しても広く普及しているとは言い難い.我々は独自のリスクスコアを用いてDVT・PEの術前リスク評価を行うとともに, 1998年12月より全手術症例に対してintermittent pneumatic compression(以下, IPC)による予防を行っている.方法:今回, IPC導入以前の1997年8月〜1998年11月までの全身麻酔下手術症例109例とIPC導入後の1998年12月〜2001年3月までの216例を対象としてDVT・PE発生率を比較した.結果:IPC非使用群では4例にDVT・PEの発生を認めたが(3.7%), IPC使用群216例では1例のみにPEの合併を認めた(0.5%, p=0.045).ロジスチック解析ではIPC使用によりDVT・PEのリスクが10分の1に減少した.IPC使用による副損傷は経験していない.術前リスクスコアが平均値もしくはそれ以下の2例でもDVT・PEの発生を認めており, 発症の予測は困難である.考察:IPCは簡便で有用な周術期DVT・PE予防措置であり, 全手術症例に対して施行する必要があると考える.

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