著者
南 宏典 長嵜 寿矢 福岡 宏倫 秋吉 高志 小西 毅 藤本 佳也 長山 聡 福長 洋介 上野 雅資
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.271-278, 2018-04-01 (Released:2018-04-28)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

症例は49歳の女性で,子宮頸癌IVB期の診断に対して術前化学療法後,開腹広汎子宮全摘および骨盤内リンパ節郭清を施行された.術後放射線化学療法を施行中に腹痛が出現し,腹部造影CTで右外腸骨動脈による絞扼性イレウスの診断となり緊急開腹手術を施行した.術中所見では骨盤内リンパ節郭清によって露出された右外腸骨動静脈,臍動脈,尿管によって形成される間隙に終末回腸が迷入/嵌頓し,絞扼されていた.嵌頓腸管は不可逆的な血流障害を来していたため,絞扼の原因となった脈管を損傷することなく小腸部分切除術を施行し吻合再建した.骨盤内リンパ節郭清時の露出脈管が原因となった絞扼性イレウスの1例を経験したので報告する.
著者
辻 孝 澤井 照光 林 洋子 山田 義久 松本 博文 宮崎 拓郎 稲村 幸雄 長嵜 寿矢 中越 亨 綾部 公懿
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.24-29, 2002
被引用文献数
5

はじめに:手術後の肺塞栓症(pulmonary embolism:以下, PE)は致死率の高い重大な合併症であり, 塞栓子の多くは深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:以下, DVT)に由来する.本邦では術後の発生率が低いために, 予防法に関しても広く普及しているとは言い難い.我々は独自のリスクスコアを用いてDVT・PEの術前リスク評価を行うとともに, 1998年12月より全手術症例に対してintermittent pneumatic compression(以下, IPC)による予防を行っている.方法:今回, IPC導入以前の1997年8月〜1998年11月までの全身麻酔下手術症例109例とIPC導入後の1998年12月〜2001年3月までの216例を対象としてDVT・PE発生率を比較した.結果:IPC非使用群では4例にDVT・PEの発生を認めたが(3.7%), IPC使用群216例では1例のみにPEの合併を認めた(0.5%, p=0.045).ロジスチック解析ではIPC使用によりDVT・PEのリスクが10分の1に減少した.IPC使用による副損傷は経験していない.術前リスクスコアが平均値もしくはそれ以下の2例でもDVT・PEの発生を認めており, 発症の予測は困難である.考察:IPCは簡便で有用な周術期DVT・PE予防措置であり, 全手術症例に対して施行する必要があると考える.