- 著者
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盛田 真千子
香川 幸子
- 出版者
- 一般社団法人日本色彩学会
- 雑誌
- 日本色彩学会誌 (ISSN:03899357)
- 巻号頁・発行日
- vol.13, no.3, pp.206-218, 1990-03-10
- 被引用文献数
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5
慣用色名は時代差, 世代間差, 生活環境などの影響を受け, 同一色名でも色差が生じたり認識できなくなるという問題点がある。本研究は今日の社会で慣用色名がどのような色域で認識されているのか, また, その認識に影響を及ぼす諸要因について, 女子学生を対象にした調査から検討した。調査は JIS Z 8102から選出した105語の慣用色名に対し, 提示した色票 (153色) から該当する色票を抽出する方法で行った。その結果, 認識されている色名 (66.7%), あいまいな色名 (16.2%), 認識されない色名 (17.1%) に大別できた。また, 認識されている色名の反応色域を JIS 値と比較した結果, やや異なった色域に反応を示したものが11.4%あり, これらは主に JIS 値より高彩度に反応する傾向がみられた。同時に行った生活意識調査 (18項目) の因子分析結果では8因子が抽出された。各因子に対する被調査者の因子得点差から, 色名の認識に与える影響を調べたが, 顕著な差は認められなかった。顔料に用いられる色名やパッケージの色は, 慣用色名の認識に影響を与える要因と考えられる。調査結果でも反応色は顔料の色名の色と一致し, また, 本来の色より彩度が誇張されるパッケージの色に反応する傾向がみられた。一方, 記憶色として暖色系は寒色系より覚えがよいとされるが, 今回の結果においても暖色系の色名は認識されやすい傾向があった。