著者
伊藤 浩司 稲永 忍
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.90-96, 1988-03-05
被引用文献数
5

ネピアグラス(品種メルケロン)について, 東京及び宮崎における植え付け当年の乾物生産力及び生長パラメーターを比較する目的で実験を行なった. 東京では1985年5月20日, 宮崎では1984年及び1986年の5月1日に苗を植え付け, 多肥条件下で圃場栽培した材料につき, 初霜直前の時期まで, 生長解析を行なった. 栽培終期は, 東京では11月上旬, 宮崎では11月中旬であった. 植物体全乾物重の栽培終期における値は, 東京では39.3t/ha, 宮崎の1984年度では51.8t/ha, 1986年度では40.1t/haであり, 必ずしも常に宮崎の方が高いという傾向はなく, いずれも南九州以北の耕地における各種作物の生産力の最高位値に匹敵する. 6月下旬以前及び9月上旬以後の期間は, 宮崎に比べて東京の方が, 気温及び日射量が低く生産速度も低い. また, 秋の気温低下に伴って生産が殆ど停止する時期は, 東京の方が早い. しかし, 7月上旬から8月下旬にかけては, 両地域の気温はほぼ等しく, 日射量は東京の方が低いにも拘らず, 宮崎の両年度に比べて東京の方が, 葉面積指数の増大速度が高いとともに吸光係数が小さく, 純同化率は高い. そのため, 葉面積指数の増大に伴う個体群生長速度の増加勾配及び最高値はともに東京の方が高くなる. このことは, 東京における, 生産可能期間が短く栽培期間中の気温及び日射量が概して低いことに伴う生産力の低下を, 補償することとなる.

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