- 著者
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森田 茂紀
根本 圭介
- 出版者
- 日本作物学会
- 雑誌
- 日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, no.3, pp.359-362, 1993-09-05
水稲根系の形態について研究していく場合, 根系の枠組みを構成している1次根の伸長方向は, 重要な形質となる. 著者等は, 1次根の伸長方向を定量的に推定するための方法を開発改艮してきた. しかし, ある根系における1次根の空間的な分布を評価したり, 異なる根系を相互に比較する方法は, いまだ確立していなかった. そこで, 1次根が空間的に均等に伸長していることを仮定した水稲1次根均等伸長モデル (均等モデル) を想定した. この均等モデルの特性について検討を行なった結果, 1次根の走向角 (1次根と水平面とがなす角度) をθとした場合, 走向角別の1次根の頻度分布がcos θであること, 走向角の平均値が約32.7゜であること, 走向角が0-30゜と30-90゜の1次根の数が等しいことなどが分かった. 実際に, 水稲品種むさしこがねおよびIR50の根系における1次根の走向角別頻度分布を均等モデルと比較したところ, いずれの品種も斜横方向が若干「空いて」いるが, 斜下方向が若干「混んで」いるという傾向を示した. さらに, 両品種の差異についてみてみると, IR50に比較してむさしこがねが下方向で1次根の相対的な密度が高いことも分かった. 以上のように, 均等モデルは1次根の空間的分布における品種間差異の解析にも有効であることが分かった.