著者
森田 茂紀
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.554-557, 2000-12-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
46
著者
金井 一成 新村 悠典 森田 茂紀 Issei Kanai Yusuke Shinmura Shigenori Morita
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.13-20, 2017-06-22

石油枯渇対策や地球温暖化対策として再生可能エネルギーが注目されているが,著者らのグループは,食料と競合しないセルロース系原料作物として,イネ科のC4型・多年生植物であるエリアンサス(Erianthus spp.)を取り上げ,栽培研究を進めている。エリアンサスは高いバイオマス生産性を発揮することが知られているが,物質生産を支えている群落構造の解析はほとんど行われていない。そこで本研究では,定植1年目および2年目の群落について出穂期における群落構造を比較検討した。定植2年目の群落では,1年目に比較して地上部バイオマス量が4倍ほどに増加していた。地上部バイオマス量を光合成器官(葉身)と非光合成器官(葉鞘・茎・穂)とに分けると,両者とも大きく増えていたが,とくに後者の増加が著しかった。これは,定植2年目の群落は1年目の刈り株から再生したものであり,再生を開始する時点ですでに多くの分げつ芽が形成されており,生育初期に急激に茎数を増やすことができたため,茎が長く,太くなるための生育期間が十分に確保できたからと考えられる。また,出穂期における層別刈取り法で葉重の垂直分布を調査した結果や,プラントキャノピーアナライザーを利用して葉面積の垂直分布の形成過程を調査した結果によれば,群落構造は生育とともに変化し,光合成器官の垂直分布は定植2年目に群落の高い方へ移動した。そのため,群落内の比較的高いところで相対照度が減衰してしまい,群落内部まで光が到達していなかった。このように,定植2年目は1年目よりバイオマス量が著しく増えていたが,群落構造と相対照度の減衰の様相からみると,群落としての受光態勢は必ずしも最適かどうかは分からない。間引きをして群落の光環境を改善すれば,さらに収量が上がる可能性が高い。エリアンサスは多年生作物であるため,栽植密度の影響も含めてさらに追跡していく必要があるが,本研究の結果を低投入持続的な栽培方法の確立に役立てたいと考えている。
著者
森田 茂紀 豊田 正範
出版者
日本作物學會
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.217-223, 2000-06-05
参考文献数
28
被引用文献数
3

メキシコ合衆国バハ・カリフォルニア州のゲレロ・ネグロで, 日本政府とメキシコ政府の共同事業として, メキシコ沙漠地域農業開発プロジェクト(以下, プロジェクト)が実施された.プロジェクトの目的は, 沙漠地域で野菜と果樹を点滴灌漑栽培するための技術を開発し, 移転することであった.プロジェクトの圃場の土壌と, そこで用いられる灌漑水は, いずれもpHと塩類濃度が高いという問題を持っているため, 作物の耐塩性に関する問題は重要な課題である.そこで本研究では, 耐塩性の問題を研究していくための基礎的なデータを得るために, 根から吸収されて茎葉部へ転流される様々なイオンについて検討した.すなわち, プロジェクトで重要な作物であるトウガラシとメロンについて, 成熟期の出液中に含まれているイオンの分析を行なうとともに, 出液速度を測定した.露地栽培したトウガラシでは出液中のイオン濃度に昼夜で差があったが, 出液速度も昼頃にピークを持つ山型の日変化パターンを示した.一方, 畝立マルチ栽培のメロンでは, イオン濃度も出液速度も昼夜に関係なくほぼ同じレベルであった.そこで, 出液速度を考慮して検討したところ, 耐塩性に関係しているナトリウムイオンの濃度は出液速度が大きいと低く, 出液速度が小さいと高いことが明らかとなった.なお, 土壌のイオン濃度も場所によって異なっていたため, バックグラウンドとして土壌成分を基準にした比較も行なった.以上のように, 出液成分に着目したアプローチによって, 作物の耐塩性を研究するために基礎的データが得られるが, 出液速度や土壌条件を考慮して解析する必要があることが明らかとなった.
著者
阿部 淳 根本 圭介 胡 東旭 森田 茂紀
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.572-575, 1990
被引用文献数
5

水稲根系の形成について研究していく場合, 個体間あるいは株間で1次根の分布を比較する必要があるが, 従来有効な手法が開発されていなかった。これは1次根の伸長方向 (GDPR) の分布がどのようなものであるか, 必ずしも明らかではないためである。したがって, 異なる標本間におけるGDPRの分布の差を検討するには, 分布の形についての前提を必要としないノンパラメトリック法の利用が妥当と考えられる。本研究では, 同一条件下で栽培した3品種, すなわち, 南京11号 (A), 土橋1号 (B), および, 無芒愛国 (C) の代表株について, Kolmogorov-Smirnov two sample testを用いて, GDPRの分布の差の検定を行なった。この方法では, 各標本の累積相対度数分布 (Sn(x)) を求め, 2標本間のSn(x) の差の最大値が, 棄却値D<SUB>α</SUB>より大きい場合には, 「2つの標本のGDPRは有意水準αで互いに異なった分布を持つ」と判定する。ヒストグラムではBがAとCとの中間型のGDPRの分布を示すようにみえたが, 検定の結果, AのみがB, Cとは有意に異なったGDPRの分布を持つことが明らかとなった。このことは, 従来, 統計学的手法による厳密な解析にはなじみにくかった水稲1次根の形質についての検討に, ノンパラメトリック法が有効であることを示唆するものである。
著者
森田 茂紀 根本 圭介
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.359-362, 1993-09-05

水稲根系の形態について研究していく場合, 根系の枠組みを構成している1次根の伸長方向は, 重要な形質となる. 著者等は, 1次根の伸長方向を定量的に推定するための方法を開発改艮してきた. しかし, ある根系における1次根の空間的な分布を評価したり, 異なる根系を相互に比較する方法は, いまだ確立していなかった. そこで, 1次根が空間的に均等に伸長していることを仮定した水稲1次根均等伸長モデル (均等モデル) を想定した. この均等モデルの特性について検討を行なった結果, 1次根の走向角 (1次根と水平面とがなす角度) をθとした場合, 走向角別の1次根の頻度分布がcos θであること, 走向角の平均値が約32.7゜であること, 走向角が0-30゜と30-90゜の1次根の数が等しいことなどが分かった. 実際に, 水稲品種むさしこがねおよびIR50の根系における1次根の走向角別頻度分布を均等モデルと比較したところ, いずれの品種も斜横方向が若干「空いて」いるが, 斜下方向が若干「混んで」いるという傾向を示した. さらに, 両品種の差異についてみてみると, IR50に比較してむさしこがねが下方向で1次根の相対的な密度が高いことも分かった. 以上のように, 均等モデルは1次根の空間的分布における品種間差異の解析にも有効であることが分かった.
著者
恒川 篤史 鈴木 雅一 森田 茂紀 飯山 賢治 篠田 雅人 西田 顕郎
出版者
鳥取大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、多様な生態系を対象としてさまざまなタイプの数値シミュレーションモデルを適用し、その生態系で生じている現象の理解を深め、新たな現象を解明すると同時に、モデル自体についてもさまざまな改良や開発を続けてきた。主要な研究対象と成果は以下の通りである。1.日本の代表的な森林であるスギ・ヒノキ人工林の東京大学千葉演習林において、Komatsu et al.(2006)によって開発された生態系プロセスモデルを用いて、斜面部による蒸散開始時刻の違いがどのような要因によって生じるかを解明した。2.米国モンタナ大学で開発されたBiome-BGCを日本の代表的な森林であるスギ・ヒノキ人工林の東京大学千葉演習林袋山沢に適用した結果、幹材積炭素含有量の、植栽から現在までのモデルによる計算値の推移は、千葉演習林のスギの収穫表と袋山沢での観測値をほぼ再現した。3.Centuryモデルを富士山における一次遷移のデータに適用し、その適用性を検討した。いくつかのパラメータを変更する必要があったが、パラメータを変更することでCenturyモデルは富士山における一次遷移のデータを良好に再現することができた。4.Biome-BGCモデルをモンゴル中央県のバヤンウンジュールの典型草原に適用した。さまざまなチューニングにより実測値の正確な予測が可能となった。このモデルを用いて干ばつに対する植生影響のシミュレーションを試みた。5.広域スケールの生態系プロセスモデルとして、光合成有効放射吸収率(FPAR)、葉面積指数(LAI)、4種類の気候データ(純放射、日最低気温、日平均気温、飽差)および土地被覆図を用いた生産効率モデルを用いて、1982年から1999年までの全球陸域NPPを推定した。