- 著者
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松崎 守夫
豊田 政一
- 出版者
- 日本作物学会
- 雑誌
- 日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.4, pp.569-574, 1996-12-05
- 被引用文献数
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この報告では, 十勝地方における登熟期間の気象条件とコムギ粉のアミログラム最高粘度との関係を検討するために, 暦日にともなうアミログラム最高粘度, α-アミラーゼ活性の推移を検討した. 開花期が約2週間異なる品種のアミログラム最高粘度は, 同一年次内のほぼ同じ暦日に300BU以下に低下(低アミロ化)した. 低アミロ化は1992年には8月11日〜17日, 1993年には7月21日〜27日に観察され, 同じ暦日にα-アミラーゼ活性も約10 Abs/g以上の値を示した. 1992年には8月8日〜l0日に約60 mmの降水量が記録されており, 1992年の低アミロ化は降雨によって起こったと考えられた. しかし, 1993年の7月18日〜26日の降水量は3 mmであり, 1993年の低アミロ化には, 降雨以外の気象条件が大きく影響したと考えられた. その時期は低温寡照条件であったため, 低温寡照条件が子実の乾燥を阻害し, 低アミロ化に影響した可能性が考えられた. しかし, 登熟期間における降水遮断処理によって1993年のアミログラム最高粘度は高く維持されたため. 1mm以下の降雨や夜間の結露など, 降水量としては記録されない降水が低アミロ化に影響した可能性も考えられた. 1993年の低アミロ化においては, 低アミロ化後のα-アミラーゼ活性の増加がわずかであったこと, 最高粘度の推移に品種間差がみられたこと, 他の品質特性の劣化を伴わなかったことも特徴的であった. また, 1993年の低アミロ化の状況は1988年と類似していたことから, 1993年の低アミロ化は特殊な現象ではないと考えられ, 十勝地方においては降水量が少ない時期であっても低アミロ化が生じうることが示唆された.