著者
松崎 守夫 豊田 政一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.183-188, 1997-06-05
被引用文献数
8

本報告では, コムギ品質形成過程についての基礎的知見を得るために, 登熟にともなうコムギ粉の物理的特性, タンパク特性, デンプン特性の推移を検討した. 1992年および1993年に秋播きコムギ2品種, 春播きコムギ2品種を開花後3日から3日毎に収穫し, その子実から調整された60%粉を用いて上記特性を測定した. 粉ぺーストの反射率から測定した粉の白さ, 明るさは一粒重の増加にともなって最大粒重到達期まで増加した. タンパク質に関係する特性と考えられる比表面積, 沈降価の推移には品種間差が観察された. 春播きコムギ品種のハルユタカ, ハルヒカリでは, 比表面積は登熟期間中ほとんど変化しなかったが, 沈降価は最大粒重到達期まで増加した. しかし, 秋播きコムギ品種のチホクコムギ, タクネコムギでは比表面積, 沈降価とも登熟にともない減少する傾向を示した. アミログラム最高粘度は品種, 年次によって異なった推移を示した. 今回の結果において, 子実含水率が約40%である最大粒重到達期以降, コムギ粉の品質特性が大きく向上することはなかった. 立毛コムギの品質特性から考えた場合, 子実含水率が40%以下の時期にはコムギは収穫可能であると考えられた.
著者
松崎 守夫 高橋 智紀 細川 寿
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.13-22, 2006-01-31
参考文献数
26
被引用文献数
2

北陸地方のダイズは主に重粘土転換畑で栽培されているが, それらの圃場は排水性が悪いため, 湿害が懸念される.北陸地方の梅雨は6月下旬〜7月中旬となるが, その時期は, ダイズが湿害を受けやすい生育初期や花芽分化期に相当する.ここでは, 北陸地方の重粘土転換畑で栽培したダイズにおいて, 梅雨時の過湿条件の影響と被覆尿素の湿害軽減効果を検討した.6m幅の圃場外周に明きょを施工し, 梅雨時に地表面まで湛水する圃場と, 湛水しない圃場を設けた.また, 営農試験地において, 転換初年目の暗渠敷設圃場, 未敷設圃場を供試した.各圃場に対し, 被覆尿素を施用しない対照区, 40日, 70日, 100日, 100日シグモイド, 140日タイプの被覆尿素10gN/m^2を, 基肥として全面施肥する区を設けた.過湿条件によって, 窒素集積量, 収量は減少し, 窒素集積量の減少は主にウレイド態窒素集積量に, 収量の減少は主に莢数の減少に由来した.被覆尿素の効果は, 湿害が発生した圃場で見られ, 梅雨明けまでに溶出量が多い40日, 70日, 100日タイプで効果が見られる場合が多かった.40日, 100日タイプは収量, 70日タイプはウレイド態窒素集積量を増加させる傾向があった.以上のように, 北陸地方の重粘土転換畑では, 梅雨時の過湿条件によってダイズの窒素集積量, 収量が減少したが, 過湿時に溶出量が多い被覆尿素によって, それらの減少は軽減される傾向があった.
著者
松崎 守夫 豊田 政一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.569-574, 1996-12-05
被引用文献数
4

この報告では, 十勝地方における登熟期間の気象条件とコムギ粉のアミログラム最高粘度との関係を検討するために, 暦日にともなうアミログラム最高粘度, α-アミラーゼ活性の推移を検討した. 開花期が約2週間異なる品種のアミログラム最高粘度は, 同一年次内のほぼ同じ暦日に300BU以下に低下(低アミロ化)した. 低アミロ化は1992年には8月11日〜17日, 1993年には7月21日〜27日に観察され, 同じ暦日にα-アミラーゼ活性も約10 Abs/g以上の値を示した. 1992年には8月8日〜l0日に約60 mmの降水量が記録されており, 1992年の低アミロ化は降雨によって起こったと考えられた. しかし, 1993年の7月18日〜26日の降水量は3 mmであり, 1993年の低アミロ化には, 降雨以外の気象条件が大きく影響したと考えられた. その時期は低温寡照条件であったため, 低温寡照条件が子実の乾燥を阻害し, 低アミロ化に影響した可能性が考えられた. しかし, 登熟期間における降水遮断処理によって1993年のアミログラム最高粘度は高く維持されたため. 1mm以下の降雨や夜間の結露など, 降水量としては記録されない降水が低アミロ化に影響した可能性も考えられた. 1993年の低アミロ化においては, 低アミロ化後のα-アミラーゼ活性の増加がわずかであったこと, 最高粘度の推移に品種間差がみられたこと, 他の品質特性の劣化を伴わなかったことも特徴的であった. また, 1993年の低アミロ化の状況は1988年と類似していたことから, 1993年の低アミロ化は特殊な現象ではないと考えられ, 十勝地方においては降水量が少ない時期であっても低アミロ化が生じうることが示唆された.