- 著者
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浦嶋 泰文
堀 兼明
- 出版者
- 一般社団法人日本土壌肥料学会
- 雑誌
- 日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
- 巻号頁・発行日
- vol.74, no.2, pp.163-168, 2003-04-05
PGPRを用いて,生育遅延型の連作障害を解決することを目指している。農業利用に当たってはPGPRを何らかの形で土壌に導入しなければならない。本研究では,軟弱野菜としてホウレンソウを対象とし,ホウレンソウの生育を促進するPGPRの作物根圏における挙動,根への定着性および接種方法について検討した。1)浸漬する菌懸濁液の菌密度が10^5cfu m L^<-1>以上では,菌密度にかかわらず,種子に付着した菌密度には差異が見られなかった。種子の菌密度にかかわらず,ホウレンソウ根に定着した接種菌の菌密度には顕著な差異が見られなかった。2)ホウレンソウ種子を10g L^<-1>メチルセルロース(重合度100)で処理し4℃で保存することで,菌密度の低下を抑えられ,比較的長期(6ヵ月)にわたり種子の接種菌密度を高く維持することが可能であった。6ヵ月保存後の種子の発芽率を見ると,いずれの処理区においても種子の発芽率は90%以上と高く,種子バクテリゼーションの方法として適当であった。3)ホウレンソウの生育を促進する機能をもつ蛍光性シュードモナスを土耕(ポット試験)のホウレンソウに供試したところ,水耕の場合には見られた根重および地上部新鮮重に関し顕著な生育促進効果が見られなかった。生育促進効果が認められなかったのは接種菌が根に定着しなかったためと推察される。4)稲わら牛糞堆肥,おがくず馬糞堆肥および稲わら馬糞堆肥を接種菌と同時に添加した場合は,接種菌株の土壌中での菌密度の低下が有機物無施用区に比べて緩やかで,有機物の同時施用で接種菌の土壌中の菌密度が維持可能であった。