著者
堀 兼明
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.60-69, 2010-01

中山間地の小規模野菜産地では、平坦地にくらべて法面や畦道等の比率が高いために、こうした場所に発生する雑草の処理が問題となっている。とくに除草剤を使いづらい有機栽培や減農薬栽培では、雑草処理の問題は一段と深刻である。露地圃場において雑草を土壌にすき込んだ場合、雑草種子等の発芽を抑制するため、夏季にビニルマルチを用いた太陽熱利用土壌消毒(以下太陽熱処理)が行われている。太陽熱処理は、ビニルハウス内では十分な地温上昇が見込まれるために、土壌生息性の病害虫や雑草に対して安定した効果を発揮するが、露地では地温が気象条件に大きく左右されるので、安定した効果が得られる条件を明らかにすることが求められている。そこで、未利用植物質有機物資源である雑草を有効利用するために、夏季の露地畑に刈り取った雑草を積極的にすき込み、ビマニルマルチを用いた太陽熱処理により雑草の種子の発芽を抑制すると同時に、粘質土壌の物理性改善をめざす技術の開発をめざした。
著者
堀 兼明
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.85, no.1, pp.60-69, 2010 (Released:2011-03-28)
著者
堀 兼明 福永 亜矢子 浦嶋 泰文
出版者
農業技術研究機構近畿中国四国農業研究センター
雑誌
近畿中国四国農業研究センター研究報告 (ISSN:13471244)
巻号頁・発行日
no.1, pp.77-94, 2002-03
被引用文献数
5

中山間地域における野菜の有機栽培ビニルハウスの作土及び下層土の,主として化学性の実態を調査した結果,以下の土壌管理上の問題点・特徴が摘出された。1 中山間地域の水田利用野菜栽培圃場の特徴として,礫層の出現により有効土層が浅い圃場が多かった。2 土壌のpHは高めであり,EC,交換性陽イオンはほとんどが診断基準値を超えて高く,塩基バランスが悪化している圃場が多かった。3 土壌のリン酸はビニルハウス建設年次の古い圃場で著しく含量が多く,これらの圃場では水溶性リン酸も検出され,下層土までリン酸が溶脱・集積している圃場が認められた。重金属類は土壌汚染防止に関する基準値を超えている例はなかったが,過剰に含まれているリン酸によると推定される,亜鉛欠乏の恐れが認められる圃場があった。塩素は単独で過剰障害の恐れが認められる圃場があった。化学肥料を主とした施肥体系の場合とは異なり,硝酸カルシウムが主成分ではなく,硫酸イオンが水溶性陰イオンのうちで最も多く,ECを高めている主要因の1つであった。同時に,炭酸イオンの寄与率が高いことが推察された。4 カリ,石灰,苦土が過剰に蓄積している圃場が多く,このうちカリ,苦土は水溶性の含量も高いことから,下層土まで溶脱・集積している圃場が認められた。ただし,化学肥料を主とした施肥体系の場合と比較すると,カルシウムが主成分ではあるものの,その寄与率は低くカリ,マグネシウムの寄与率が高かった。5 作土の硝酸は多くの圃場で過剰であり,下層まで溶脱・集積している圃場が認められた。亜硝酸がガス障害発生の恐れのあるレベルに蓄積している圃場,及び潜在的にその恐れがある圃場が認められた。可給態窒素の含量は概して多く,数作を無窒素で栽培可能なほど蓄積している圃場も認められた。6 環境保全の面から窒素の収支の推定を行ったところ,投入窒素の30-90%が野菜に利用されず,溶脱・蓄積・揮散されていると推定された。7 また,当町内で流通・使用されている主な堆肥中の肥料成分等の実態が明らかとなり,適正施用法確立のための基礎資料が得られた。8 以上の結果,有機栽培土壌では,化学肥料主体の場合と比較して化学性が大きく異なることが判明し,同時に小規模な中山間地域における有機栽培では,比較的画一的な対策で対応できる,大規模な平野・台地・丘陵地における化学肥料主体の場合とは異なる土壌・施肥管理指針が必要であることが明らかとなった。
著者
堀 兼明 福永 亜矢子 浦嶋 泰文 須賀 有子 池田 順一
出版者
農業技術研究機構近畿中国四国農業研究センター
雑誌
近畿中国四国農業研究センター研究報告 (ISSN:13471244)
巻号頁・発行日
no.1, pp.77-94, 2002-03
被引用文献数
5

中山間地域における野菜の有機栽培ビニルハウスの作土及び下層土の,主として化学性の実態を調査した結果,以下の土壌管理上の問題点・特徴が摘出された。1 中山間地域の水田利用野菜栽培圃場の特徴として,礫層の出現により有効土層が浅い圃場が多かった。2 土壌のpHは高めであり,EC,交換性陽イオンはほとんどが診断基準値を超えて高く,塩基バランスが悪化している圃場が多かった。3 土壌のリン酸はビニルハウス建設年次の古い圃場で著しく含量が多く,これらの圃場では水溶性リン酸も検出され,下層土までリン酸が溶脱・集積している圃場が認められた。重金属類は土壌汚染防止に関する基準値を超えている例はなかったが,過剰に含まれているリン酸によると推定される,亜鉛欠乏の恐れが認められる圃場があった。塩素は単独で過剰障害の恐れが認められる圃場があった。化学肥料を主とした施肥体系の場合とは異なり,硝酸カルシウムが主成分ではなく,硫酸イオンが水溶性陰イオンのうちで最も多く,ECを高めている主要因の1つであった。同時に,炭酸イオンの寄与率が高いことが推察された。4 カリ,石灰,苦土が過剰に蓄積している圃場が多く,このうちカリ,苦土は水溶性の含量も高いことから,下層土まで溶脱・集積している圃場が認められた。ただし,化学肥料を主とした施肥体系の場合と比較すると,カルシウムが主成分ではあるものの,その寄与率は低くカリ,マグネシウムの寄与率が高かった。5 作土の硝酸は多くの圃場で過剰であり,下層まで溶脱・集積している圃場が認められた。亜硝酸がガス障害発生の恐れのあるレベルに蓄積している圃場,及び潜在的にその恐れがある圃場が認められた。可給態窒素の含量は概して多く,数作を無窒素で栽培可能なほど蓄積している圃場も認められた。6 環境保全の面から窒素の収支の推定を行ったところ,投入窒素の30-90%が野菜に利用されず,溶脱・蓄積・揮散されていると推定された。7 また,当町内で流通・使用されている主な堆肥中の肥料成分等の実態が明らかとなり,適正施用法確立のための基礎資料が得られた。8 以上の結果,有機栽培土壌では,化学肥料主体の場合と比較して化学性が大きく異なることが判明し,同時に小規模な中山間地域における有機栽培では,比較的画一的な対策で対応できる,大規模な平野・台地・丘陵地における化学肥料主体の場合とは異なる土壌・施肥管理指針が必要であることが明らかとなった。
著者
浦嶋 泰文 須賀 有子 福永 亜矢子 池田 順一 堀 兼明
出版者
農業技術研究機構近畿中国四国農業研究センター
雑誌
近畿中国四国農業研究センター研究報告 (ISSN:13471244)
巻号頁・発行日
no.1, pp.61-75, 2002-03
被引用文献数
3

施用する全窒素量が等しくなるように有機物(イナワラ牛糞堆肥とオガクズ豚糞堆肥)および化成肥料を連用した圃場(連用区)と有機物および化成肥料連用を中断した圃場(残効区)においてダイコンを栽培し,有機物施用がダイコンの品質成分に与える影響を検討した。1 ダイコンの生育は連用区では資材投入量の多い区で優れた。また同一施用量ではマルチ区の生育が勝った。2 ダイコンの葉色は,連用区および残効区とも資材の施用量が多いほど濃く,同一施用量ではマルチ区の葉色が濃かった。3 ダイコン根部の硝酸態窒素,イソチオシアネート,アスコルビン酸等の含量は,有機物施用,化学肥料施用に関わらず,根重と相関があり,根重が小さいほど,これらの含量が高かった。以上より,投入窒素量が同一の場合,ダイコンの内部品質成分含量は有機物あるいは化学肥料間で一定の傾向は認められず,有機物連用区で有意に高い含量ではなかった。
著者
浦嶋 泰文 堀 兼明
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.163-168, 2003-04-05

PGPRを用いて,生育遅延型の連作障害を解決することを目指している。農業利用に当たってはPGPRを何らかの形で土壌に導入しなければならない。本研究では,軟弱野菜としてホウレンソウを対象とし,ホウレンソウの生育を促進するPGPRの作物根圏における挙動,根への定着性および接種方法について検討した。1)浸漬する菌懸濁液の菌密度が10^5cfu m L^<-1>以上では,菌密度にかかわらず,種子に付着した菌密度には差異が見られなかった。種子の菌密度にかかわらず,ホウレンソウ根に定着した接種菌の菌密度には顕著な差異が見られなかった。2)ホウレンソウ種子を10g L^<-1>メチルセルロース(重合度100)で処理し4℃で保存することで,菌密度の低下を抑えられ,比較的長期(6ヵ月)にわたり種子の接種菌密度を高く維持することが可能であった。6ヵ月保存後の種子の発芽率を見ると,いずれの処理区においても種子の発芽率は90%以上と高く,種子バクテリゼーションの方法として適当であった。3)ホウレンソウの生育を促進する機能をもつ蛍光性シュードモナスを土耕(ポット試験)のホウレンソウに供試したところ,水耕の場合には見られた根重および地上部新鮮重に関し顕著な生育促進効果が見られなかった。生育促進効果が認められなかったのは接種菌が根に定着しなかったためと推察される。4)稲わら牛糞堆肥,おがくず馬糞堆肥および稲わら馬糞堆肥を接種菌と同時に添加した場合は,接種菌株の土壌中での菌密度の低下が有機物無施用区に比べて緩やかで,有機物の同時施用で接種菌の土壌中の菌密度が維持可能であった。
著者
浦嶋 泰文 堀 兼明
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.157-162, 2003-04-05
被引用文献数
1

連作障害軽減を最終的な目標としつつ,有用微生物の農業利用をめざして研究を進めている。そこで,対象として軟弱野菜であるホウレンソウを用い,蛍光性シュードモナス属細菌のなかからホウレンソウの生育を促進する菌株の検索を試みた。1)プレパラート用染色バットを用いた幼植物段階の生物検定法を用いることでホウレンソウ根の生育に影響を与える蛍光性シュードモナスの選抜が可能であり,幼植物段階の生物検定法として適当であった。2)収穫期までホウレンソウを栽培した生物検定法で,ホウレンソウの生育(地上部および根部)を約50%以上促進する蛍光性シュードモナス菌株が数菌株得られた。3)分離したPGPRのなかには2種のタイプが存在し,Aタイプ(生育初期より根の生育を促進)とBタイプ(生育の初期は根の生育を抑制)に分けることができた。4)水耕栽培条件においては接種した蛍光性シュードモナス属細菌はホウレンソウ根に十分定着しており,根に十分に定着しているためにホウレンソウに対する生育促進機能を発揮しうると推察された。5)BタイプであるD23株に関しては,培養した培地中に,多量でホウレンソウ根の生育を抑制し,少量で根の生育を促進する物質の存在が示唆された。