- 著者
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定本 裕明
飯村 康二
本名 俊正
山本 定博
- 出版者
- 一般社団法人日本土壌肥料学会
- 雑誌
- 日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
- 巻号頁・発行日
- vol.65, no.6, pp.645-653, 1994-12-05
- 被引用文献数
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McLAREN らの方法とこれを一部改良した方法とを比較検討し,汚染,非汚染各種土壌中の銅,亜鉛,カドミウムの形態分布の特性を調べた.結果の概要は次のとおりである.1)有機結合態の抽出方法を検討した結果,原法の0.1M ピロリン産カリウム抽出法では,有機物がほとんど含まれていない黒ボク土下層土と表層土と大差ない抽出量が得られたが,6%過酸化水素で有機物を分解した後,2.5%酢酸で抽出する方法では,下層土における抽出量が著しく低下した.遊離酸化物吸蔵態の抽出については,原法の UV-酸性シュウ酸アンモニウム抽出では赤黄色土で遊離酸化物の還元,抽出が不十分であったが,アスコルビン酸-酸性シュウ酸アンモニウム抽出によれば他の土壌はもちろん,とくに赤黄色土において遊離酸化物吸蔵態の重金属抽出量が著しく増加した. 2)無機結合態や有機結合態の抽出に用いた2.5%酢酸は,ゲータイトおよびギブサイトに吸着された重金属をほぼ全量抽出した. 3)非汚染土壌中において銅は,全体の約半分が残渣が全体の約6割から7割を占めており,続いて遊離酸化物吸蔵態の割合が高い.カドミウムは,同夜亜鉛で少ない交換態,,無機結合態が比較的多く,土壌中のカドミウムの量が植物に吸収されやすい形で存在していることを示した. 4)汚染土壌では各重金属とも非汚染土壌より交換態,無機結合態等の植物に吸収されやすい形態が多く,特に汚染水田のカドミウムは交換態の割合が非常に高く,わずかな汚染でも植物中のカドミウム濃度を増加させる危険性があることが示された.