- 著者
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近藤 昭彦
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 千葉大学環境リモートセンシング研究センター年報
- 巻号頁・発行日
- vol.3, pp.81-82, 1998-11
リモートセンシングは水文科学の研究において重要な道具となり得るだろうか。その可能性がある限り徹底的に追求するのが,環境リモートセンシングを確立させるための道順である。現在取り組んでいる課題の主なものは可視・赤外のリモートセンシングによって,1)蒸発散量をダイレクトに推定できるか,2)広域の乾湿状況を把握できるか,の2点である。様々な現象が積分されて記録されている衛星データから必要な情報を抽出するためには,対象とする現象と衛星データのシグナルの中に経験的な関係があるかどうかをまず検討する必要がある。そのような関係が得られれば,その物理的背景を検討することによって,新しい手法,モデル,アルゴリズムが発見される可能性が生じる。このような立場から,草地における蒸発散量と植生指標の関係について最初に発表した。実際に計測された蒸発散量とTMによる植生指標は草木の生育期間では驚くほどよく一致した。蒸発散量は光合成速度,バイオマスとも高い相関を持つため,リモートセンシングにより植生に関わるrateおよびstateを推定できる可能性は確かめられた。次に,NOAA/AVHRRにより,中国わい河平原において広域乾湿分布の推定を試みた。手法は,横軸に植生指標,縦軸に輝度温度をとり,散布の傾きを乾湿の指標とする方法である。得られた乾湿分布は先行降雨指数の分布と非常によく一致した。時系列データも梅雨明け後の乾燥過程を明瞭に捉えていた。その物理性に関しては今後,熱赤外イメージャー,分光放射計を使って検討する準備は整った。以上のように,リモートセンシングでは最も実用的である可視・赤外のセンサーによる情報抽出にかなりの程度成功したといえる。当日は以上の話題の他にもデータベース部門のホームページの紹介を兼ねて様々な話題提供も行った。