著者
金子 大二郎
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学環境リモートセンシング研究センター年報
巻号頁・発行日
vol.9, pp.28-31, 2004-08

中国・インドの巨大な人口増問題と新たな水資源制約時代を背景に,現代における穀物需給の体制上の問題点と水資源不足の視点から,穀物生産量について新たな光合成型のモニタリング法が必要である。人口の巨大な両国における水制約の条件下では,従来からの有効積算気温や植生現存量ばかりでなく,日射と作物の水ストレスをも考慮した穀物生産指標を新たに開発することが重要となる。本研究は,世界気象データと衛星による植生指標を用い,日射・有効気温・植生現存量・気孔開度を考慮した光合成型の穀物生産指標をモデル化し,水資源不足時代における穀物生産量を早期に監視する方法を提案した。小麦・米・トウモロコシ等の穀物生産量の中で水稲を最も重視した。水稲は食糧問題の中で単位面積当たりの収穫量が小麦より高いことから人口扶養力が大きい。また,水資源を最も多く必要とし,水配分の視点から重要な作物となっているからである。
著者
西尾 文彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学環境リモートセンシング研究センター年報
巻号頁・発行日
vol.7, 2002-06

(1)地球の将来に、一体何が起こるのであろうか? われわれが危惧する地球環境の未来への透視図として極域における水に刻まれた地球の気候の歴史がある。例えば、今から1万年前から現在に至るまで、私たちの地球の歴史において気候はたいへん安定した時代である。この期間は、文明は栄え、過去10万年前のどの類似した時間的長さよりも、平穏でより安定した気候によって特微づけられている。グリーンランドの氷床上の幾つかの場所で掘削されたコアは、急に訪れる寒さや、暖気の一続きの期間の連続を示し、それぞれ1000年かそれ以上続き10年の経過を越えて、摂氏10℃も北ヨーロッパにおいて冬の平均気温が上昇したり低下したりしている。このような、突然の変化のサインは、大気の不純物の記録やメタン含有量、年層の氷板に保存された降雨(雪)量によって、読み取ることができる。(2)温暖化の影響による雪水圏(海氷・氷河・本床)の変動温室効果ガス増大で起きていると懸念される、地球の温暖化による雪水圏の変動のモニタリングを継続して行っていくためには、衛星による観測は最も重要な手法である。可視からマイクロ波までの多重センサーを利用し、多くの雪水の情報を得ていくことができる。(3)南極大陸氷床下の湖に微生物が存在するのか。4千メートルの氷の下に湖が存在するという。百万年以上前の微生物が凍結保存されている。(4)南極からの贈り物。極域科学は地球科学の中でも宇宙科学、海域科学のようにフロンティアの要素を多く持ち、宝物が多くあり面白い分野である。
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学環境リモートセンシング研究センター年報
巻号頁・発行日
vol.10, pp.5-10, 2005-05

衛星データによる地球表面と大気の放射収支の推定・評価は、地球全体の気候変動研究に対して基礎的な量を提供するとともに、気候変動にかかわる全球モデルの初期値データや検証データとしても重要性が高い。また放射収支は地球表層環境における主要なエネルギー過程として、植生や水文、海洋の胴体研究に欠くことのできない量である。本研究では東アジアにおける放射収支の長期変動を、その要因となる大気パラメータの変動を含めて、衛星データによる解析と地上ネットワーク観測による解析の両面から総合的に研究する。
著者
近藤 昭彦
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学環境リモートセンシング研究センター年報
巻号頁・発行日
vol.3, pp.81-82, 1998-11

リモートセンシングは水文科学の研究において重要な道具となり得るだろうか。その可能性がある限り徹底的に追求するのが,環境リモートセンシングを確立させるための道順である。現在取り組んでいる課題の主なものは可視・赤外のリモートセンシングによって,1)蒸発散量をダイレクトに推定できるか,2)広域の乾湿状況を把握できるか,の2点である。様々な現象が積分されて記録されている衛星データから必要な情報を抽出するためには,対象とする現象と衛星データのシグナルの中に経験的な関係があるかどうかをまず検討する必要がある。そのような関係が得られれば,その物理的背景を検討することによって,新しい手法,モデル,アルゴリズムが発見される可能性が生じる。このような立場から,草地における蒸発散量と植生指標の関係について最初に発表した。実際に計測された蒸発散量とTMによる植生指標は草木の生育期間では驚くほどよく一致した。蒸発散量は光合成速度,バイオマスとも高い相関を持つため,リモートセンシングにより植生に関わるrateおよびstateを推定できる可能性は確かめられた。次に,NOAA/AVHRRにより,中国わい河平原において広域乾湿分布の推定を試みた。手法は,横軸に植生指標,縦軸に輝度温度をとり,散布の傾きを乾湿の指標とする方法である。得られた乾湿分布は先行降雨指数の分布と非常によく一致した。時系列データも梅雨明け後の乾燥過程を明瞭に捉えていた。その物理性に関しては今後,熱赤外イメージャー,分光放射計を使って検討する準備は整った。以上のように,リモートセンシングでは最も実用的である可視・赤外のセンサーによる情報抽出にかなりの程度成功したといえる。当日は以上の話題の他にもデータベース部門のホームページの紹介を兼ねて様々な話題提供も行った。
著者
浅井 冨雄
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学環境リモートセンシング研究センター年報
巻号頁・発行日
vol.3, 1998-11

気象学は最近の数十年問にその対象領域が拡大すると共にそれぞれその内容は多様化し著しく進展した。したがって,気象学のどのテーマをとりあげても興味深い今昔物語ができあがる。今回は私の最終講義でもあるので,私自身がこれまで深くかかわり,かつ時宜を得た冬季日本の豪雪に関する研究を歴史的に概観し,特に気象レーダーや気象衛尾によるリモートセンシング技術の果たした役割を強調する。日本は温帯に位置するにもかかわらず世界でも有数の豪雪地帯である。この特徴を(1)豪雪の源である水蒸気がどのようにして大気中へ大量に供給され貯蔵されるのか,(2)貯蔵された大量の水蒸気がどのようにして降雪として解放されるのか。降雪の舞台。背景。(3)降雪がどのようにしてある特定の場所・時間に集中するのか。降雪の局所集中化などの3点に整理して解説する。最後に,局地豪雪の最近の研究成果と話題,すなわち,冬季日本海上に発現する中規模低気圧について,その実態と発生・発達のメカニズムについて論じる。その要点は次の通りである。中規模低気圧の発生には大気下層における水平収束が不可欠であり,日本海西部の収束帯は朝鮮半島北部にある山岳によって形成される。さらに中規模低気圧の形成には海面からの顕熱と潜熱のフラックスが不可欠で,顕熱補給は大気下層を加熱し,対流圏下層を不安定化することで対流を活発にする。収束帯では中規模上昇気流と活発な対流があり,温められた下層の大気は水蒸気と共に対流と中規模の上昇流で上層に運ばれ潜熱の解放と共に対流圏中層を温める。これがひるがえって上昇流に地下水涵養が行われることを明らかにした。
著者
石山 隆
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学環境リモートセンシング研究センター年報
巻号頁・発行日
vol.10, pp.51-52, 2005-05

新彊ウイグルは文型から理系にまたがる基礎科学研究の対象として、また出すとストームの発生、土壌の塩分集積、荒漠化といったような生活環境研究の対象として極めて重要、かつ興味ある地域である。研究発表は長年、新彊ウイグルにおいて調査、研究を行っている5人の研究者によって行われた。上原(緑資源機構)は新彊ウイグル北部のアルタイ地域における実践的な砂漠化防止プロジェクトの成功の詳細を説明した。それによると自然草地の退化面積は自然草地全体の45%近くとなっている。食肉需要により家畜頭数が増加している。羊一頭あたりの草地面積は、4.8ha(1949年)から1.3ha(1995年)に減少したと報告した。杜(農業環境技術研究所)はタクラマカン沙漠の縦断道路の建設と道路周辺の植栽による環境変化、とくに局地気候の変化を放射エネルギーの収支と観測とその解析結果から説明した。安部(防災科学技術研究所)は天山山脈と崑崙山脈のそれぞれ標高2400m、2800mの斜面に気象観測装置を設置してダストの輸送量を見積もった。そして高山帯の氷河に降着するダストの氷河の融解の役割を説明した。石山(千葉大学)はオアシスを形成する河川の水資源総量と衛星データから求めたオアシスの耕作可能地、灌漑農地との関係について報告した。水資源総量がほぼ50億立方平方キロまでは両者は直線の関係があるが、それ以上になると耕作可能地は飽和する。水資源がすべて効率よく利用されるならば灌漑農地とともに耕作可能地も増加してよいはずである。しかし実際には西縁のオアシスのように流域面積が大きくなるほど、耕作可能地の増加につながらないのは、それらの地域では感慨水路の未発達や低い水管技術により、水資源の浪費が大きいことが原因と指摘した。Buhe(北海道環境科学研究センター)は新たに開発した植生指数を衛星データの解析応用し、得られた植生指数からタクラマカン沙漠周辺の土壌水分を推定した。また植生指数から新彊ポプラなどの植生分布を推定した。