- 著者
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浅井 冨雄
- 出版者
- 千葉大学
- 雑誌
- 千葉大学環境リモートセンシング研究センター年報
- 巻号頁・発行日
- vol.3, 1998-11
気象学は最近の数十年問にその対象領域が拡大すると共にそれぞれその内容は多様化し著しく進展した。したがって,気象学のどのテーマをとりあげても興味深い今昔物語ができあがる。今回は私の最終講義でもあるので,私自身がこれまで深くかかわり,かつ時宜を得た冬季日本の豪雪に関する研究を歴史的に概観し,特に気象レーダーや気象衛尾によるリモートセンシング技術の果たした役割を強調する。日本は温帯に位置するにもかかわらず世界でも有数の豪雪地帯である。この特徴を(1)豪雪の源である水蒸気がどのようにして大気中へ大量に供給され貯蔵されるのか,(2)貯蔵された大量の水蒸気がどのようにして降雪として解放されるのか。降雪の舞台。背景。(3)降雪がどのようにしてある特定の場所・時間に集中するのか。降雪の局所集中化などの3点に整理して解説する。最後に,局地豪雪の最近の研究成果と話題,すなわち,冬季日本海上に発現する中規模低気圧について,その実態と発生・発達のメカニズムについて論じる。その要点は次の通りである。中規模低気圧の発生には大気下層における水平収束が不可欠であり,日本海西部の収束帯は朝鮮半島北部にある山岳によって形成される。さらに中規模低気圧の形成には海面からの顕熱と潜熱のフラックスが不可欠で,顕熱補給は大気下層を加熱し,対流圏下層を不安定化することで対流を活発にする。収束帯では中規模上昇気流と活発な対流があり,温められた下層の大気は水蒸気と共に対流と中規模の上昇流で上層に運ばれ潜熱の解放と共に対流圏中層を温める。これがひるがえって上昇流に地下水涵養が行われることを明らかにした。