著者
中井 専人 遠藤 辰雄
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.183-199, 1995-04-25
被引用文献数
2

降雪雲が丘陵地形(出羽丘陵;稜線の標高約0.6km)を越える時の降雪と気流の特徴を明らかにするため、ドップラーレーダーとレーウィンゾンテによる観測を行った。1990年2月3日の寒冷前線の通過に伴って降雪雲が現れ、約5時間にわたって直径数十kmのエコーがいくつも出羽丘陵上を通過した。これらのエコーのエコー頂高度は丘陵上で低くなっていた。丘陵を通過する流れは'subcritical'であり、混合層上端の高度も丘陵上で低くなっていたと考えられる。観測されたエコーは大きさ5kmから10kmのセルを含んでおり、これらのセルの移動速度は丘陵上で3m/s増加していた。丘陵上から10km風上までの範囲で上空の降水強度の増加が見られ、降雪雲と地形性上昇によって形成された雲との間でseeder-feeder mechanismが働いていたと考えられる。丘陵風下においては下層に冷気がたまっていたため斜面を下降する流れが形成されず、昇華による降水量の減少が抑えられていた。丘陵風下においても反射強度の増加がみられたが、これは主に降雪粒子の併合成長と融解によるものであり、降水量はあまり変化していなかったと考えられる。この事例では降雪雲の振る舞いは丘陵による地形性の流れに強く影響されていたが、平均的な気流に対する降雪雲の影響はそれほど大きくはなかった。

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