- 著者
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青梨 和正
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- 気象集誌 (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.3, pp.393-406, 1993-06-25
- 被引用文献数
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日本域スペクトルモデルにレーダーアメダス雨量解析データを導入する初期値化手法を開発した。本研究の初期値化手法は、Takano and Segami(1992)と同様な、降水過程を含むノーマルモードイニシャリゼーションの前に、Physical Initializationによって初期値の熱力学場及び力学場を較正し、較正された初期値から計算したモデル降水強度が実測降水強度と等しくなるようにするものである。この初期値化手法による降水情報導入の降水予報へのインパクトを、梅雨前線上の擾乱の事例(1990年6月30日)に対する予報実験によって調べた。その結果は以下のとおりである:1)降水初期値化は、降水予報のスピンアップエラー、位置ずれ誤差ともに改善した。2)降水域の位置ずれの改善は熱力学場の較正による相対湿度の改変が寄与する。ただし、モデル降水域で実測の降水域でない領域では、熱力学場の較正は、相対湿度を経験的に決めたしきい値まで下げるというprimitiveな方法をとっている。3)力学場の較正は、初期の上昇流場の決定に寄与し、予報早期の降水強度の改善をする。4)Takano and Segami(1992)は、降水過程を含むノーマルモードイニシャリゼーションが非断熱加熱が弱いために初期の発散場を余り変えないと指摘しているが、本研究ではこのノーマルモードイニシャリゼーション自体は、強いモデル降水域でも初期場の鉛直速度をほとんど変えない。降水過程を含むノーマルモードイニシャリゼーションは降水に伴う発散場を保持することで、断熱的なノーマルモードイニシャリゼーションが与える、降水域の立ち上がりの遅さをを減らしている。