- 著者
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児玉 安正
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- 気象集誌 (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.5, pp.581-610, 1993-10-25
- 被引用文献数
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梅雨前線帯、南太平洋収束帯(SPCZ)、南大西洋収束帯(SACZ)は亜熱帯域の顕著な収束帯である。これらは(以下亜熱帯収束帯)は、強い水蒸気収束、相当温位場での前線強化、対流不安定の生成で特徴づけられる顕著な亜熱帯前線帯である。亜熱帯収束帯が特定の領域に出現する理由を明らかにするため、循環場の大規模な特性を亜熱帯域全域について調べ、亜熱帯収束帯の周囲と対比した。また、亜熱帯収束帯と循環場の短時間変動の関係を調べた。亜熱帯収束帯は以下のような循環場の条件が準定常的に満たされる領域に現れた。(1)亜熱帯ジェットが亜熱帯域(緯度30-35度)にある。(2)下層の極向き気流が亜熱帯高気圧の西縁で卓越する。これらの条件のうち1つでも準定常的にみたされない領域では、亜熱帯域に降雨域がないか、弱い降雨域があらわれた。亜熱帯収束帯の活動は、循環場の短時間変動において上記の条件が満たされる期間に活発化した。また、これらの条件が短期間でも満たされれば、亜熱帯収束帯に類似の性質を持つ降水帯が亜熱帯域のどこでも出現した。下層の極向きの気流は、亜熱帯域における水蒸気収束、相当温位場での前線強化、対流不安定の維持に不可欠であった。この気流は、亜熱帯高気圧と亜熱帯高圧帯内の熱的低圧部の間で地衡風的に生成した。モンスーン対流と大陸上の地面加熱は熱的低気圧の生成に重要であった。