著者
石塚 昌範 児玉 安正 Masanori ISHIZUKA Yasu-Masa KODAMA 弘前大学大学院理工学研究科:(現)八戸市役所 弘前大学理工学部 Department of Earth Sciences Graduate School of Hirosaki University:(Present affrication)The government of Hachinohe city Department of Earth and Environmental Sciences Hirosaki University
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 = Tenki (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.48, no.9, pp.673-687, 2001-09-30
参考文献数
12
被引用文献数
2

TRMM(熱帯降雨観測衛星)の多重センサー(PR:降雨レーダー, VIRS:可視赤外観測装置, TMI:マイクロ波放射計, LIS:雷観測装置)観測データに, GMS(静止気象衛星ひまわり)の短時間間隔の赤外画像や他の気象データを併用して, 九州南方海上に発現したにんじん雲の三次元構造と周囲の循環について事例解析を行った.にんじん状雲の構造は, 西に尖った角状の先端部と, 雲域が連続的に大きく広がる東部で, 大きく異なっていた.先端部では, にんじん状雲の走向にほぼ直交する縞状の雲列がみられた.各雲列の北端には背の高い対流セルがあり, そこからセルの動きに相対的な上層の風によりアンビルが広がることで雲列が作られていた.西側のセルほど新しくアンビルの伸びが少ないため, 西に尖った形状が作られていた.東部では, 背の高い積乱雲が線状に並び, この線状降水帯の南北に上層風により広がったアンビル雲がみられた.降水帯の南北で降水構造に非対称性がみられた.南側では上層で多くの降水粒子が観測されたが, 地上での降水は弱い.一方, 北側では中層から下で層状性の降水が広い範囲で活発であった.A carrot-shaped(or tapering)cloud system developed to the south of Kyushu Island was studied using TRMM(Tropical Rainfall Measuring Mission)multi-sensor observations by PR(Precipitation Radar), VIRS(Visible and Infrared Scanner), TMI(TRMM Microwave Image), and LIS(Lightning Imaging Sensor). We also utilized GMS(Geostationary Meteorological Satellite)frequent IR observations and other meteorogical data. Structure of the cloud system was quite different between the tip portion sharpened in the west and the eastern portion where the upper-level cloud canopy extended continuously. In the tip portion, banded cloud streaks extended almost perpendicular to the axis of the carrot-shaped cloud system. Each cloud streak was an anvil extended from a deep convective cell located at the northern end of the streak. The anvils elongated along relative upper-level wind to the cell motion. Since the extension of anvils was smaller for the newer cells existed near the western tip, tapering shape of the cloud system was maintained. In the eastern part of the cloud system, a strong precipitation line composed of deep convective cells appeared and upper-level anvil clouds widely spread to the both sides of the line. In the southern side of the line, the anvil clouds contained much precipitation-size ice particles, and surface rain was scare due to evaporation of particles under the cloud base, except several sporadic convective rainfalls. In the northern side of the line, fairly strong stratiform rain was found over a wide area below the midtroposphere.
著者
浅井 冨雄 柯 史〓 児玉 安正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.675-684, 1998-10-25
被引用文献数
7

1987年の暖候期について東アジア・西太平洋上の雲の日変化を静止気象衛星「ひまわり」3号の赤外放射観測資料を用いて調べた。調査対象領域は北緯50度から南緯20度、東経90度から160度の範囲である。得られた主な結果は以下の通りである。(1)雲量日変化は大きな一日周期変動と小さな半日周期変動から成る。1日周期変動の振幅と位相は陸上と海上で大きく異なるが、半日周期変動の振幅と位相は陸上と海上で類似している。半日周期変動の雲量の極大は、地方時の3時〜5時と15時〜17時にみられる。(2)日周変化の位相の系統的なずれがチベット高原からその東方の中国大陸上でみられる。すなわち、雲量の極大はチベット高原上では夕方に、四川盆地では真夜中に現れる。日周変化の位相の東進速度は北米ロッキー山脈の東方でみられる降水頻度の日周変化のそれに類似している。局地的に誘起される対流活動に加えて、チベット高原で形成する雲クラスターの東進は中国大陸上の雲の日変化を理解するためには考慮されるべきであろう。(3)チベット高原の東方の中国大陸で日周変化の位相の東進は盛夏期に不明瞭になる。これは主に中国大陸で夕方局地的に発達する対流とチベット高原越えの上層偏西風の衰弱によると推測される。
著者
立花 義裕 万田 敦昌 山本 勝 児玉 安正 茂木 耕作 吉岡 真由美 吉田 聡 坪木 和久 中村 知裕 小田巻 実
出版者
三重大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

四方を海に囲まれた日本.その鮮明な四季は極めて特徴的である.日本の気候に対しては,日本を囲む縁辺海の海洋の影響が強くあることを大気と海洋の変動を評価し明らかにした.例えば,梅雨末期に豪雨が集中する理由は東シナ海の水温の季節的上昇が,九州で梅雨期に起こる集中豪雨の発生時期の重要な決定要因であること,日本海の海面水温の高低によって,寒気の気団変質過程に影響を及ぼし,寒波を強化・緩和されることを示した.
著者
児玉 安正 佐藤 尚毅 二宮 洸三 川村 隆一 二宮 洸三 川村 隆一 吉兼 隆生
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

亜熱帯域には3つの顕著な降水帯(亜熱帯収束帯)があり,梅雨前線帯はそのひとつである.本研究では,各収束帯の生成メカニズムについて研究した.SACZ(南大西洋収束帯)について,ブラジル高原の影響をデータ解析と数値実験の両面から調べた.亜熱帯ジェット気流の役割に関連して,ジェット気流に伴う対流圏中層の暖気移流と降水の関係を論じたSampe and Xie(2010)仮説が梅雨前線帯だけでなく,SACZとSPCZ(南太平洋収束帯)にも当てはまることを示した.梅雨前線帯が南半球の収束帯に比べて向きや緯度が異なることについて,黒潮の影響を論じた.
著者
児玉 安正 石塚 昌範
出版者
東京大学
雑誌
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター研究報告 (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.26, 2001-03-29

平成12年度共同利用研究集会「雨と海況」(2000年8月23日~24日, 研究代表者:渡辺明)講演要旨Heavy rain and sea condition at occurrence time of heavy rain(Abstracts of scientific symposia held at Otsuchi Marine Research Center in 2000)
著者
古津 年章 児玉 安正 高薮 縁 柴垣 佳明 下舞 豊志
出版者
島根大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2001

本研究課題は,スマトラにおける赤道大気レーダ(EAR)を中心にして熱帯積雲対流活動を総合的に観測し,対流活動の階層性ならびに対流圏起源と大気波動の振舞いを明らかにすることを目的とする.そのため,風の鉛直プロファイルを観測するEARと同時に気温や水蒸気密度の鉛直プロファイルや降雨の3次元構造を観測する機器,更に様々な地上測器を設置し,それらによる観測を実施してきた.取得されたデータ解析をすすめ,赤道スマトラ域を中心とした対流活動の特性ならびにそれに起因する大気擾乱や重力波に関して以下のことが明らかになった.1. 海洋大陸では,全赤道域平均に比べて,海洋と陸域の降雨特性が混合されて表れていることが見出された.この特徴は,雷活動にも現れていた.2. 赤道域特有の季節内変動であるMadden-Julian振動(MJO)やスーパー雲クラスター(SCC)に対応して, 3次元降雨構造が大きく変化する.大規模対流活動抑圧期には,却って水平規模が小さく背の高い対流が支配的になる.3. 大規模擾乱の内部にメソスケール雲クラスター(CC)が明確に現れる。SCCの東進はCCの連続的な発達の結果として生じており,西スマトラの山岳地形とも関係する.4. 対流活動の微物理過程の帰結として生じる雨滴粒径分布は,顕著な季節内変動,日周変化を示す.5. 上に述べた対流活動の時空間変動に伴い,雷活動度や熱源の鉛直分布が明確に変化する.これは,陸上と海上で異なる特性を示す.更に,短周期の鉛直流変動にも顕著な日周変化,季節内変化が現れる.
著者
山田 琢哉 児玉 安正
出版者
東京大学
雑誌
東京大学海洋研究所大槌臨海研究センター研究報告 (ISSN:13448420)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.79-80, 2002-03-29

平成13年度共同利用研究集会「降水システムと降水変動」(2001年8月23日, 研究代表者:渡辺明)講演要旨Variation of precipitation and rainfall system(Abstracts of scientific symposia held at Otsuchi Marine Research Center in 2000))
著者
力石 國男 遊馬 芳雄 荒木 喬 佐藤 清一 道上 宗巳 児玉 安正
出版者
弘前大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1990

本研究では雪情報システム,各種気象観測機器,レ-ザ-等による降雪観測と併せて,既存のアメダスデ-タ,高層気象デ-タ,衛星画像などの解析を行った.このうち観測的研究については現在まだ実施中であるので,その他の解析によって得られた研究成果を以下に列挙する.(1)津軽地方の降雪と風向との密接な関係が明らかになった.例えば,鰺ケ沢の風向が南西の場合には津軽半島中部・北部に,西風の場合には五所川原,青森,野辺地を結ぶライン上に,北西風の場合には津軽平野中部・南部に多量の降雪が観測される.これらはいずれも局地的な風の収束帯を伴っている.(2)青森市内北西部の降雪は南部とかなり異なった降り方をしている.南部の降雪量は気温だけでなく気温の高度差(大気の不安定度の指標)と非常に良い相関があり,気温の高度差が降雪量予測のための重要なパラメ-タ-であることがわかった.(3)12時間前までの高層気象デ-タ(秋田及びウラジオスト-クの気温,等圧面高度,気温の高度差など)を用いて,青森市の日降雪量の予測式を導いた.事後予測の精度は±11cmである.(4)秋田の9時および21時の高層気象デ-タを用いて地吹雪指数の予測式を導き,地吹雪の予報が高い精度で可能であることを実証した.(5)日本列島における冬季の降水量のメソスケ-ルの特性を調べ,日本海小低気圧と降水量との関係などを明らかにした.(6)岩木山麓における長年の積雪断面観測デ-タを整理して山地での積雪特性を明らかにするとともに,札幌,新庄,長岡,富山での積雪との比較研究を行った.
著者
児玉 安正
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.581-610, 1993-10-25
被引用文献数
7

梅雨前線帯、南太平洋収束帯(SPCZ)、南大西洋収束帯(SACZ)は亜熱帯域の顕著な収束帯である。これらは(以下亜熱帯収束帯)は、強い水蒸気収束、相当温位場での前線強化、対流不安定の生成で特徴づけられる顕著な亜熱帯前線帯である。亜熱帯収束帯が特定の領域に出現する理由を明らかにするため、循環場の大規模な特性を亜熱帯域全域について調べ、亜熱帯収束帯の周囲と対比した。また、亜熱帯収束帯と循環場の短時間変動の関係を調べた。亜熱帯収束帯は以下のような循環場の条件が準定常的に満たされる領域に現れた。(1)亜熱帯ジェットが亜熱帯域(緯度30-35度)にある。(2)下層の極向き気流が亜熱帯高気圧の西縁で卓越する。これらの条件のうち1つでも準定常的にみたされない領域では、亜熱帯域に降雨域がないか、弱い降雨域があらわれた。亜熱帯収束帯の活動は、循環場の短時間変動において上記の条件が満たされる期間に活発化した。また、これらの条件が短期間でも満たされれば、亜熱帯収束帯に類似の性質を持つ降水帯が亜熱帯域のどこでも出現した。下層の極向きの気流は、亜熱帯域における水蒸気収束、相当温位場での前線強化、対流不安定の維持に不可欠であった。この気流は、亜熱帯高気圧と亜熱帯高圧帯内の熱的低圧部の間で地衡風的に生成した。モンスーン対流と大陸上の地面加熱は熱的低気圧の生成に重要であった。