- 著者
-
岩崎 博之
武田 喬男
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- 気象集誌 (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.6, pp.733-747, 1993-12-25
- 被引用文献数
-
7
1986年7月13日から15日にかけて観測された梅雨前線帯を移動する長寿命雲クラスターの事例解析を行った。大陸上で出現した雲クラスターは東シナ海を移動し、東経130度付近で北と南の雲群に分かれた。移動速度の遅い南の雲群の内部では、新しい積乱雲群が既存の積乱雲群の西方40-80kmに形成されていた。各積乱雲群の内部では、更に、既存の積乱雲の西方約15kmに新しい積乱雲が連続的に形成されていた。移動速度が低下した南の雲群の内部では、異なる二つのスケールで対流雲の形成が起きていた。活発な対流雲に起源する北の雲群は対流雲が消滅した後も10時間以上長続きした。東経135度付近での鉛直レーダの観測から、この雲群には融解層と複数のストリークが認められた。東経140度付近では中層から上層に対流不安定が存在し、傾圧性の強い総観規模の上昇流域に位置していた。この"対流雲"に起源する雲群は梅雨前線帯を移動するにつれて"層状雲"に変化したと考えられる。