- 著者
-
加藤 輝之
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
- 巻号頁・発行日
- vol.74, no.3, pp.355-363, 1996-06-25
- 参考文献数
- 15
- 被引用文献数
-
10
1993年8月6日に起こった鹿児島豪雨を対象として静水圧モデルと非静水圧モデルとで雨の降り方にどのような違いが生じるかについて調べてみた. 数値モデルとして気象庁の現業用日本域静水圧モデル(Japan Spectal Model)を親モデルとしてネスティングすることができる3次元非弾性非静水圧モデル(Saito, 1994)とそのモデルの静水圧バージョン(Kato and Saito, 1995)を用いた. 降水生成過程として雲水, 雨水を直接予報する雲物理過程と湿潤対流調節をそれぞれ単独にまたは併用して用いた. 雲物理過程を用いた5kmと10km格子の非静水圧モデルは観測とよく一致した連続的な集中豪雨を再現した. Kato and Saito (1995) が理想的な湿潤対流を対象とした比較実験で指摘した通り, 静水圧モデルは非静水圧モデルに比べ雨を過大に降らせ, 降雨域を過大に広げた. また, water loadingの効果が非静水圧の効果より対流の発達には重要であった. さらに, 5km格子の静水圧モデルはKato and Saito (1995) で取り扱った理想的な湿潤対流の場合に比べかなり過大に雨を降らした. 以上の結果より, 高分解能の数値予報モデルにはwater loadingを取り入れた非静水圧モデルを用いることが望まれる.