著者
高野 功
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.673-694, 1996-10-25

寒候期に日本の南岸では中部山岳の影響によるシアーラインと、それに関係した下層のメソ雲システムがしばしば発生する。こうした雲システムのうち、低気圧の発生を伴う顕著な発達が見られた1991年10月14日の事例について、JSMを基にした高分解能モデルによる数値シミュレーションを行った。シミュレーションの結果の解析から、このじょう乱の発生発達過程は次のようにまとめられる。雲域の発生初期には、下層の北風が中部山岳を迂回して吹いていた。中部山岳の両側での強い北風に対し、山岳の風下では風は弱く台風によってもたらされた高相当温位の気塊が滞留していた。南岸域では徐々に東風が強まったが、この東風は雲システムを西に移動させ、また中部山岳の西端から伸びる北西-南東走向の正渦度を持つシアーラインを強化した。このシアーラインの北東側ではバンド状の降水域が予想されたのに対し、南西側は山の斜面を下降した乾燥した気塊が占めた。初期値から18時間後にはシアーライン上に浅いメソ低気圧が発生したが、低気圧性の循環とほぼ地衡風バランスにある。その後下層の低気圧は南岸沿いに進んできた中層のトラフと結合して更に発達し、総観規模の低気圧となった。シミュレーションの結果から、このじょう乱の発生初期には山岳の影響が大きく、発達期には中層のトラフとの結合が寄与したことが示された。

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