著者
高野 功 瀬上 哲秀
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
気象集誌 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.377-391, 1993-06-25
被引用文献数
1

数値予報モデルの降水の立ち上がりを改善するため、気象庁の局地モデル(JSM)を用い、メソスケールの対流雲システムを対象として初期値をいくつか変えた実験を行った。実験では、予報解析サイクル(FAサイクル)、非断熱加熱を含むNNMI、および水蒸気の初期値化の効果を調べた。またNNMIの非断熱加熱にはモデルの物理過程の計算したものと、雨量強度の観測値から推定したものの2種類の取扱いを試みた。現業システムによる基準予報では、降水の立ち上がりは悪く、雨が降り出した後もその位置に誤差がみられた。その要因としては初期値に雲システムに関わるメソスケールの情報が適切に表現されていなかったことが考えられる。FAサイクルを適用した事例では、下層の渦度パターンに見られるように初期値が改善された。その結果、基準予報にみられた予報後半の降水域の誤差は小さくなった。モデルの物理過程を使った非断熱NNMIの結果は発散成分をほとんど変えなかった。NNMIでの非断熱加熱を調べてみると非常に弱く、それが断熱の場合とほとんど同じ結果をもたらした原因と考えられる。一方、雨量強度を用いたNNMIでは初期値に降水域に強い発散成分と上昇流が生じた。しかしこの場合も予報では非断熱加熱は弱く、こうした運動場は維持されず急速に減衰してしまった。水蒸気場の初期値化はモデルの物理過程が観測された雨量強度と整合した潜熱を放出できるための条件を満たすことを意図している。解析でのFAサイクルと雨量強度を用いたNNMI、それに水蒸気場の初期値化の3つの手法を組み合わせた事例では、予報開始直後から観測値に近い降水が予想され、初期値の効果は長時間認められた。
著者
高野 功
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.673-694, 1996-10-25

寒候期に日本の南岸では中部山岳の影響によるシアーラインと、それに関係した下層のメソ雲システムがしばしば発生する。こうした雲システムのうち、低気圧の発生を伴う顕著な発達が見られた1991年10月14日の事例について、JSMを基にした高分解能モデルによる数値シミュレーションを行った。シミュレーションの結果の解析から、このじょう乱の発生発達過程は次のようにまとめられる。雲域の発生初期には、下層の北風が中部山岳を迂回して吹いていた。中部山岳の両側での強い北風に対し、山岳の風下では風は弱く台風によってもたらされた高相当温位の気塊が滞留していた。南岸域では徐々に東風が強まったが、この東風は雲システムを西に移動させ、また中部山岳の西端から伸びる北西-南東走向の正渦度を持つシアーラインを強化した。このシアーラインの北東側ではバンド状の降水域が予想されたのに対し、南西側は山の斜面を下降した乾燥した気塊が占めた。初期値から18時間後にはシアーライン上に浅いメソ低気圧が発生したが、低気圧性の循環とほぼ地衡風バランスにある。その後下層の低気圧は南岸沿いに進んできた中層のトラフと結合して更に発達し、総観規模の低気圧となった。シミュレーションの結果から、このじょう乱の発生初期には山岳の影響が大きく、発達期には中層のトラフとの結合が寄与したことが示された。
著者
小倉 義光 加藤 輝之 高野 功
出版者
日本気象学会
雑誌
天気 (ISSN:05460921)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.869-876, 2005-11-30
参考文献数
4
被引用文献数
1