- 著者
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北畠 尚子
- 出版者
- 社団法人日本気象学会
- 雑誌
- 天気 (ISSN:05460921)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.5, pp.357-370, 2000-05-31
- 被引用文献数
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日本付近の低気圧の, 特に閉塞期の構造を検討するため, 1994年4月12日から13日にかけて日本海で急発達した、低気圧の解析を行った.この低気圧は, 最初に大陸上で発生したときは前線に対して寒気側に位置していた.急発達期の初めには低気圧は前線上に位置し, Shapiro and Keyser(1990)の提案した概念モデルのfrontal fracture・Tボーン構造を持っていた.さらに最盛期には低気圧は再び寒気内に進み, 古典的温暖型閉塞の構造になった.このように1つのシステムのライフサイクルの間に2つの低気圧モデルの構造が現れたのは, 圏界面ジェット気流の変化と, それに伴う鉛直循環によるdry intrusionの寄与が考えられる.さらに, 低気圧の急発達は, 下層の前線に着目した既存の低気圧モデルの段階とは必ずしも一致しなかった.これも圏界面擾乱の発達に伴う対流圏上層の暖気移流に関連していると考えられる.