- 著者
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江川 宜伸
田中 正武
- 出版者
- 日本育種学会
- 雑誌
- 育種學雜誌 (ISSN:05363683)
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.4, pp.445-450, 1984-12-01
- 被引用文献数
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新世界に起原したトウガラシは,4つの栽培種からたる。それらのうち,C.chinense,C.baccatum 及び,C.pubescens の3種は,主として中南米でのみ栽培されているのに対し,C.annunm var.annunm は,世界中の温帯から熱帯にかけて広く栽培されている。その野生型Var.minimum は,合衆国南部,メキシコ,グァテマラから南米のペルー低地に自生している。筆者らは,C.annunm の両変種間の類縁関係を明らかにするため,京都大学による中央アメリカ及び中央アンデス地域の植物探索によって得られた材料を中心に種内のF_1雑種を作出し,その成熟分裂を観察した。その締果,野生型には,相互転座による染色体構造分化が認められ,供試系統をその染色体構造に基づいてA,B及びCの3群に分類することができた。この3群間にみられる多価染色体に関しては,A-B群間,A-C群問の雑種は4価,B-C群間は,6価を生じた。供試系統の多くは,A群に属し,染色体構造に関しては,A型が最も普遍的な型であり,B及びC型は,A型から染色体構造分化により生じたものと思われる。B型の地理的分布は,メキシコ,ボリビアに,C型のそれは,グァテマラである。野生型に見られる核型の地理的分布による大きな変異(PICKERSGILL 1971)から判断すると,野生型には分布の各地で染色体構造分化が起こっている可能性がある。一方,栽培型に一は,構造変異は認められず,供試系統はすべてA群に分類された.なお,我が国対馬在来種もA群であった。本結果並びに栽培型の核型が均一なこと(PICKERSGILL 1971)を考え併せると,栽培型の起原は比較的新しく野生のA型群から起原したと結論される。