著者
平野 寿功 菅 洋
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.42-47, 1963-03-20

(1)短目春化性に差の認められている秋播性裸麦ハニシリハダカとコピソカタギを用い,幼苗期の低温短日感応を調べるため,(A)低温短目共存区(戸外自然目長),(B)低温単独区(戸外24時間日長),(C)短日単独区(温室自然目長)の3区をもうけ,1葉展開迄→5葉展開迄処理し,後,高温長日に移し感応の程度及び進行の経過を調査、した。(2)更に,短目処理と低温処理の順序による感応の差を調べるため,低温単独区と短日単独区を作り,処理合計日数を如目とし,順序及び日数を種々に変えて感応の様相を調査した。(3)高温長日に移してから出穂迄日数により感応の程度をみると,どの区でも処理葉数が増大するほど出穂迄日数の減少がみられた。(4)低温単独区では品種間に差がないが,短目単独と低温短日共存区では2品種間に著しい差がみとめられ,いずれもコビンカタギの方が早く感応を終った。しかし,ハシリハダカの短目単独区を除げば,すべての区は4葉期迄処理には接近して抽り,おおむね3〜4葉期頃迄に感応は相当に進んでいるようである。(5)低温と短日を別々に与えた実験から推察すると,大麦では低温と短目の順序は欠きた意義をもたず,順序よりは短目春化性の大小が差とたってあらわれてくる。但しこの実験から,低温感応や短目感応は生育の初期において一層敏感であることが認められた。(6)ハシリハダカにおける低温短冒共存区と低温単独区(低温長日)の比較で,常に後者が早いことから,いわゆる低温感応と長日感応がある程度重復して受け得ることの可能性が推察された。
著者
町田 暢 山口 和重 御子柴 公人
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.28-32, 1962-03-25

大麦の凍霜害の機構を明らかにするために,大小麦の圃場において,地表面,地上3cm,15cm,50?,1m1.5mの気温および葉温,室温について,午前1時から8時までの変化を調査したg(1)気温の垂直分布は地上15cmが終始もっとも低かった。(2)葉温は室温に比較して,夜間は低く,日の出後は高く,草上気温は常にその中間であった。また,葉温は測点中最低であった。(3)葉面の結霜経過は,始めに,露がつき,やがてそれが凍って凍露となり,さらに進むと,そこから霜が生長し,それに伴なって葉色が変ったbそして,結霜度には著しい品種間差異を認め,皿型大麦に多く,渦型大麦に少なかった。
著者
中川原 捷洋 大村 武 岩田 伸夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.305-312, 1972-12-31
被引用文献数
5

日本型の連鎖分析用標識系統と外国イネとの交雑によって認められる形質分離のゆがみ現象のうち、第11連鎖群の遺伝子に関与する形質分離のゆがみは、花粉の競争力を支配する遺伝子(配偶体遺伝子)と標識遺伝子とが連鎖するために生じる。ここでは、標識遺伝子、bc(鎌不要)、dl(たれば)およびch(黄緑葉)と配偶体遺伝子(ga_2、ga_3)との連鎖関係を明らかにした。組換価はF_2の形質分離からは推定できないので、F_3の調査から各F_2個体の遺伝子型を推定することによって算出した。種々の交雑組合せを通じて、ga_2はdlの近傍に座位し、ga_3はdlよりもむしろbcにかなり近い距離に座位している。しかし、片親に用いた外国品種の違いによってその位置はかなり変異しており、しかも上記4遺伝子相互の組換価は日本イネ標識系統間交雑によって求められる通常の組換価よりもいくらか小さく見積られた。つぎに、算出した組換価を用いて、ga花粉のga^+花粉に対する授精率を算出したところ、正常花粉(ga^+)に対してga花粉は1/10以下しか授精に関与していない場合が多く、したがってgaはかなり強力な選択授精の要因であることが明らかとなった。このことは、栽培イネが分化した結果、ga遺伝子が生殖的隔離現象の重要な因子となっていることを示している。以上の結果は、雑種不稔性に加えて、配偶体遺伝子の存在によっても交雑によって形質の自由な組換が阻害されているために、外国イネがもっている望ましい形質を日本イネに導入する際に大きな障害となっていることを示すものである。
著者
辛 英範 小川 紹文 片山 平
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.56-62, 1978-03-01

近年,耐病虫性など野生種のもつ有用な遺伝子を栽培植物に導入することを目的とした新しい育種技術の確立が試みられ,すでに実用品種の育成に成功した例もある。野生イネのもつ有用遺伝子を栽培イネに導入する試みは,これからのイネ育種を進める1方法として,充分考慮されるべき問題の1つである。本報告は異種染色体添加型植物を作出するための基礎として,まず栽培イネの人為同質4倍体を育成し,これに近縁野生2倍程を交雑して,えられた異質3倍体sativa(AA)-puncta(B),sativa(AA)-intermediate(C)およびsativa(AA)-officinalis(C)について行った細胞遺伝学的・形態学的研究の結果をまとめたものである。体細胞で2n=36の染色体が数えられ,いずれの個体も明らかに人質3倍体であることを確認した。減数分裂は,PF_126を除いて,各個体間で大体類似しており,MIでは大部分の細胞で12II+12Iを示す分裂像が,また,AIでは1価染色体による分裂異常が観察された。一方,PF_126はMIで1II+34Iまたは36Iを示し,明らかに相同染色体間の不対合現象が観察され,以後の分裂に種々の異常が認められた。この染色体不対合がasynapsisであるかdesynapsisであるかは不明であるが,供試した同質4倍体の細胞質とO.officinalis(W1281)の核との何れか一方,または両者に不対合を誘起する遺伝的要因がある可能性が考えられ,その解明は今後の検討に期待したい。
著者
片山 平 寺尾 寛行 井之上 準 陳 進利
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.333-340, 1982-12-01
被引用文献数
1

イネの Aus, Aman, Boro, Bulu, Tjereh の5生態型および日本品種を供試して,酸性フォスファターゼ・アイソザイム,フェノール反応,粒型,吸水速度,メンコティール伸長の高温反応(40℃),酸素吸収量などについて比較検討した。えられた結果から,5生態'型のうち,Buluのもつ諸特性と日本品種のそれらとの間には,高い類似性のあることが認められ,日本品種の成立にBuluの影響も無視できないことが示唆された。 Buluのもつ遺伝子の日本までにたどった道筋として,ジャワ-フィリピン-台湾-琉球-日本のルートと,シャワ-中国大陸-日本のルートの2つが考えられる。
著者
村山 盛一 大村 武 ・宮里 清松
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.287-290, 1974-12-31
被引用文献数
4

栽培条件によってヘテロシスの発現がどのように変化するかを検討するために,筆者らが従来調査した交配組合せの中から組合せ能力の高いものと低いもの11組合せを選び,実用品種の経済的栽培条件の範囲に含まれる標肥普通植区・標肥密植区・多肥普通植区および多肥密植区の4条件で試験し,つぎのような結果をえた。 1)一般に組合せ能力の高い組合せはどの栽培条件でも高いヘテロシスを示し,組合せ能力の低い組合せはどの栽培条件でも低かった(表1)。 2)各形質のヘテロシスについて栽培条件間の相関係数を求めたところ,千粒重以外の形質については相関は極めて高く,ほとんどが1%水準で有意であった(表2)。 3)平均収量について有意性の検定を行たうと,鈴成×Zenith CI 7787は現品種および対照品種を通じて最高収量を示したベニセンゴクよりも3579/m^2(42%)の増収を示し,統計的に有意であった。愛国×Zenith CI 7787および農林22号×荒木も有意ではないがベニセンゴクよりもかなりの増収を示した(表3)。 以上の結果から,もしF_1種子を容易に大量に採種できる方法が開発されれば,イネの実際栽培におけるF_1雑種利用の可能性が考えられる。
著者
斎藤 清
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.19, no.5, pp.385-389, 1969-10-31

Recently, Ixia is grown on a small scale for cut-flowers in oup country. Twenty-two commercial varieties were used to examine the somatic chromosome numbers, fertility, and other habitual characteristics. Six varieties were diploid (2n=20), 8 triploid (2n=30) and the rest were tetraploid (2n=40). Tetraploids, as well as most of the triploids, had larger flowers and prettier colors, and showed considerably higher fertility than diploids. Some varietal and inter-specific crosses succeeded in the mixed state with diploids, triploids, and tetraploids levels. So, it was assumed that these tetraploids and triploids would be of allopolyploid constitutions.
著者
後藤 虎男
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.114-115, 1971-04-30
著者
飯塚 宗夫 セイソ ラボ レミヒオ マドリガル
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.151-158, 1978-06-01
被引用文献数
1

高等植物の花器諸器官は世代交代の上からみて最も重要な機能を持ち,蕚,花弁,葯,花糸,雌蕊,花盤など,それぞれ属・種の特徴ある形態に分化している。これら,花結諸器官は,もちろん,もとをただせば,同一の遺伝質をもった細胞から構成されているはずである。本研究はこのような花器諸器官を置床し,カルス形成,新器官や新個体の分化,分化個体の特性などについて調べ,分化に関する基本的諸知見を得ると共に,急速増殖,変異の誘発など育種面への応用的技術の開発を目的としている。材料には,ハナヤサイ,ミドリハナヤサイ,ハボタン,カンラン,コカブ,ハナダイコン,ミノワセダイコンおよびウォールフラワーなどアブラナ科植物を選んだ。置床はこれら材料の花弁,葯,花糸,雌蕊,花盤(花托)を用いてそれぞれ行ない,カルス形成,分化の様相をみた。この際,まず花粉形成の進みぐあいを目やすとした供試蕾齢と培地上における分化の難易度を見た。その結果,花粉四分子〜1核期の葯を持つ蕾からとった花器の諸器官から得られた成績が最もよかった。したがって他の実験にもこの発育期の蕾を用いた。培地は,MURASHIGE and SK00G(1962)を基本とし,これにIAA,IBA,2,4-D,6-BAR(箪1表),時によりイノシン(10^<-5>M)を添加調整した。カルス形成は,蒲を置床した場合,軽度に見られるに過ぎないが,他器官を用いた場合には容易に行われ,特に花弁と花盤では極めておう盛であった。この場合,培地としては,2,4-D(10^<-5>M)を単独添加したM59,または6-BAR(10^<-5>M)との併用添加によるM.60がよく,ついでM.56,M.61などであった。
著者
中川 元興 渡辺 進二
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.260-264, 1957-03-25

15 crosses were used to study on the inheritance of kernel texture in wheat varieties which affects mealy and glassy of kernels and results were shown in table 1 and figure 1. From these results, the inheritance of kernel texture was proved to be influenced by factors in the generation of F_2 seed. The method of testing of kernel texture may be described as follows : After harvested, each kernel of parents and F_2 Seed was cut off middle part of kernel (cross section) by razer blade on the glass plate, and cross section of kernel was magnifyed by the magnifying glass (2. 5 fold) and selection which was made after a thorough comparison can be classified as follows. Glassy kernel (G) decided to select completely glassy, semi-glassy kernel (g) was selected almost parts (over 80%) of cross section were occupied by glassy, semi-mealy kernel (m) are occupied by mealy over 80% and mealy kernei (M) completely mealy. Segregation ratios was compared with glassy (contained G and g) and mealy (contained M and m). The results of segcrregation ratios to lernel texture of F_2 Seed generation, the factor hypothes and factor analysis were applied in this report as mentioned above. Results obtained may be summerized as follows.
著者
江口 恭三 前原 為矩
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-48, 1979-03-01

近年沖縄県下で古い在来種タバコの子孫と思われる12の自生タバコの種子が蒐集されたが,これらの蒐集系統について,形態特性ならびに主要病害に対する抵抗性を調査するとともに育種素材としての有用性を検討した。これら蒐集系統の問にはきわめて広範な形態変異がみられ,草丈は95.3cmから171.9cm,葉数は9.8枚から17.3枚,葉型指数は0.471から0.764まであり,葉型には有柄と無柄,花色にはピンク,白,ピンクと白の絞りの3種類があった。病害抵抗性については,いずれも黒板病とうどんこ病にはある程度の低抗性を示したが,立枯病にはほとんどが罹病性で,疫病には高度抵抗性から罹病性まで広範な変真が認められた。従来わが国の在来種の中には疫病に対して高度な低抗性を示す品種はみつけられておらず,本試験で高度な低抗性を示した系統は育種素材として有用であると推察された。
著者
町田 暢 御子柴 公人 山口 和重
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.307-313, 1961-12-25

大麦の凍霜害低抗性の品種間差異を明らかにしようとして,耐寒性の強いコウゲンムギと弱いみすず大麦を供試し,その生育各期に一5℃の低温定温器で6時間処理して,低温障害の差異を調査した。(1)低温による障害は著しく,生育を遅延させた。また,収量に影響甚しい時期は伸長期から穂孕期であった。(2)茎葉に及ぼす障害の程度は耐寒性の強いコウゲンムギに甚しく,弱いみすず大麦は軽微であった。(3)幼穂の凍死は幼穂長と関係し,幼穂長が6mm以上になると凍死するもの多く,5mm以下では少たかった。これはまた,桿長と密接に関係し,桿長が長く,幼穂が地表に現われやすくたるほど凍死率は高くたった。しかし,幼穂そのものの凍霜害低抗性の品種間差異は認めることができたかった。(4)凍霜害による幼穂の生死の判別にはLUYET氏溶液による染色が有効であることが明らかにされ,それによれば,幼穂の凍死には,(i)幼穂そのものが凍死する場合(ii)幼穂に続く幼桿数節が凍死し,二次的に幼穂も枯死する場合(iii)両者が凍死する場合以上の三段階のあることが判明した。
著者
吉田 智彦
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.50-57, 1980-03-01

オオムギの早生品種を晩夏に播種し12月〜1月に子実を収穫する豆まき栽培法により品種比較を試みた。無かん水条件下では品種内の出穂や成熟が乱れ,子実収量も低かった。かん水条件下では子実重が22.6〜39.5(kg/a)であった。西海皮24号(二条種)はどの環境下でも穂数が多く多収であった。羽系S104(六条種)はほぼ1個体1本の穂のみで穂揃い良く,早生で播種後約3か月で収穫できた。CIMMYT育成の系統は早生で本栽培に適するものが多かった。今後さらに多収を得るためには,成熟の穂揃いは悪いが分けつの多いもの,たらびに穂摘いを良くし成熟までの日数を短縮するためには分けつの少ない1穂小花数の多いもの,の両タイプの品種を選抜していく必要のあることが明らかにたった。
著者
平井 正志 小崎 格 梶浦 一郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.138-146, 1986-06-01
被引用文献数
3

カラタチはカンキツ類の台木として広く利用されているが,今までほとんど系統選抜されることなく用いられてきた.またカラタチは多胚性であり,通常珠心胚によって無性生殖するとされており,無性胚によって得られる遺伝的に均一な実生は台木としての優れた性質のひとつである.しかし,古くからその実生の中に生育の不均一なものがある程度存在することが知られており,その一部,葉の大きいものは4倍体実生であるとされている.しかしその他のものについては原因が解明されていない.本研究ではアイソザイム分析により,カラタチ実生中の交雑実生を識別し,また既存のいくつかの系統について,由来を検討した. カラタチのグルタミン酸オキザロ酢酸アミノ転移酵素(GOT)のアイソザイムをアクリルアミドスラブゲル電気泳動で調べた.ほとんどのカラタチ個体はGot-1およびGot-2の遺伝子座についてそれぞれ3本のバンドを示し,それぞれMPとSMの遺伝子型を示した.しかしその実生の一部ではGot-1,またはGot-2のいずれか一方または両方がホモにたっていた.これらの実生はカラタチ間の交雑により生じた個体であると考えられた.当支場に栽植されている,遺伝子型MP,SMの樹より採取された種子から生じた8ケ月の実生で調査すると,これらアイソザイムで識別できる交雑された実生の平均樹高は19.3cmであったが,その他の実生のそれは23.8cmであった.GOTアイソザイムで識別できたい交雑実生を考慮すると全実生中の交雑実生の割合は19.9%にのぼると推定された.また,苗木商から購入した8ケ月の実生についてもほぼ同様にカラタチ同士の交雑した実生が見いだされた.しかし一方,農家に植栽されている成木のカラタチを調査ではこのようた交雑実生が発見できなかった.以上の結果より普通に見られるGOT遺伝子型がMP,SMのカラタチはその他の遺伝子組み合わせより強勢た組み合わせを持っていて,自然のあるいは人為的た選択により残ってきたと考えられる,交雑実生の一部は他のカラタチよりも早く,3年目の春に開花した.これまで知られている形態的に特異な系統のうち,大花系のWebber-Fawcett,PomeroyおよびU.S.D.A.ならびに小葉系Bだとの系統はこのようた交雑に由来するものと推定された.花粉の形態においても交雑実生のものは無性胚由来のものと比べて若干の差がみられた・
著者
平井 正志 小崎 格 梶浦 一郎
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.377-389, 1986-12-01
被引用文献数
2

カンキツ類のアイソザイムによる遺伝子分析についてはT0RRESらによって行なわれているが,我が国に栽培されている多くのマンダリン類およびナツミカン,ハッサクなどについては未だ十分に分析がされていない.これらのカンキツのグルタミン酸-オキザロ酢酸アミノ転移酵素(GOT)およびリンゴ酸脱水素酵素(MDH)について分析した. 果樹試,興津支場などで保存されているもの105点,交雑あるいは自殖実生31点の計136点のカンキツを分析した.GOTについては粗抽出物を脱塩した後,またMDHについてはBlue Sepharose CL-6Bを用いて酵素を部分精製した後,アクリルアミドスラブゲル電気泳動で分析した.本研究ではGot-1の遺伝子座に関してS,A,M,FおよびP,Go-2の座ではS,M,BおよびA,Mdh-1ではA,T,B,DおよびGの対立遺伝子が識別された.このうち,Got-1のA,Got-2のA,Bは新たに発見されたものであった.
著者
下間 実
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.235-240, 1963-12-25
被引用文献数
1

スイカの果実および種子の砂質の遺伝現象を栽培種の1品種,地大和(V.No.1)とアフリカ原産の野生型の2系統(V.No.3および5)に一ついて調べた。 野生スイカの果皮には縞模様があり,果肉は白色で苦味物質を含むもの(V.No.3)と含まないもの(Y.Nc,5)があり,種子は白色(V.No.3)あるいは褐色(V.No.5)で大型である。地大和の果皮は縞がたく、果肉は赤色で甘味をもち,種子は褐色で中型である。これらのF_1雑種の果実は結果皮で果肉は白色,種子は褐色,中型で,苦味×無味(または甘味)は苦味,無味×甘味は無味である。果実の大きさおよびおもさに関してはF_1雑種は両親のほぼ中間型である。F_2では果皮の模様は縞(49)と無縞(24),果肉の苦味形質は苦味(47)と無苦味(17),種子の大きさは中型(77)と大型(24)に一分離し,分離比はいずれも3:1でそれぞれ前者が後着に対して優性でメンデル性1因子遺伝をする。果肉色はF_2において白(62),黄(10)および赤(2)の3色に分離し,その分離比は12:3:1である。果肉色の遺伝は2因子が関与し,白色はWY,黄色はwY赤色はwyによって表わされ,WはYに対して上位に働く。