著者
アルマンド ガルシア 市川 定夫
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.66-76, 1979-03-01

アボカドは,メキシコをはじめ,北米南部から中南米にかけて広く栽培される重要な果樹であるが,その遺伝学的,系統分類学的研究は,あまり進んでいない。最も普遍的な栽培型のアボカドは,分類学上,かつて2種または3種に分けられていたが,現在では,1種(Persea americana)として扱われ,3変種(var.americana, var.drymifolia,var.nubigena)を含むものとされている。一方,園芸学上は,グァテマラ系,西インド諸島3系,メキシコ系の3系に分けられ,前2系はvaramerivana.メキシコ系はvar.drymifoliaに属するとされている。ただし,異系間の雑種形成が起こるため,3系への分類は必ずしも容易ではない。この研究では.著者らがメキシコ各地から集めた52系統と,ハワイのハミルトン教授から提供を受けた9系統のアボカド(Table1)について,発芽後4か月間空調温室で育てた芽生の30形質(Table2)を調査し,統計学的分析によって変異の程度とそれによる類縁度の解析を行なったものである。分散分析の結果,調査した30形質中,15形質については系統問差異が有意であった(Table3)。また,このうち14形質は,園芸学上の3系間でも有意差が見られた(Table4).これら形質間には,高い相関関係が見られる場合が多く(Table5),そのうち6組の2形質について相関図を画くと(Fig.1),一般にメキシコ系がグァテマラ系および西インド諸島系から区別でき,後2系間には明白な区分がつけられないことが判明した。それゆえ,グァテマラ系と西インド諸島系はより近い類縁関係にあり,メキシコ系はかなり離れていると考えられる。異系間の雑種起原と考えられるもののうちにば,形質相関図上でも中間型を示すものがいくつか見られた。

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