著者
吉田 憲司
出版者
日本文化人類学会
雑誌
民族學研究 (ISSN:00215023)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.518-536, 1998-03

いま, 民族学博物館にあらためて熱い視線が注がれ始めている。人文社会科学全般における政治性・歴史性への関心の高まりと, 民族学博物館がこれまでその展示の主たる対象としてきた非西洋の諸民族の自己の歴史に対する覚醒の動きのなかで, 民族学博物館の存在が, 西洋と非西洋との歴史的関係性の具体的な証として, また文化的アイデンティティーの形成の装置として, あらためて注目されてきたからである。こうした流れをうけて, 民族学博物館のあいだでは, 現在さまざまな新しい試みが展開されつつある。旧来の展示に欠落していた部分を補おうとする修正主義的な展示。展示という営みそのものを見つめなおそうとする自省的な展示。展示する者とされる者, さらにはその展示を見る者とのあいだの対話や共同作業を志向する展示。そして, 文化の担い手自身による「自文化」の展示, などである。本稿では, 個々の展示にみられるメッセージの生成の様式(詩学)とそれがはらむ権力性(政治学)に焦点をあてながら, 民族誌展示をめぐるこうした近年の新たな取り組みの見取り図を描く。

言及状況

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こんな論文どうですか? 民族誌展示の現在 : 表象の詩学と政治学(<特集>物質文化研究の新たな可能性を求めて)(吉田憲司),1998 http://id.CiNii.jp/HsrxL

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