著者
岡田 勇 太田 敏澄
出版者
一般社団法人社会情報学会
雑誌
日本社会情報学会学会誌 (ISSN:09151249)
巻号頁・発行日
no.10, pp.98-112, 1998-09-30
被引用文献数
4

人間や社会といった観点を含んだ社会情報システムの構築や運用にとって、組織硬直に関する諸問題の発生や解決を問うことは、避けて通れぬ必要不可欠な課題である。本研究は、パーソナリティという局所的要素から、組織硬直化という大域的現象が、如何にして創発しているのかに関して、マルチエージェントシステムに基づく計算機シミュレーションを用いて解明しようとするものである。計算機シミュレーションは、操作的オーガニゼーションを可能にし、直観的には妥当性が見通せない現象についても、そのダイナミクスを議論する基礎を与えてくれる。本研究は、複雑系に関するフレームワークとしてのマルチエージェントシステムと、研究ツールとしての計算機シミュレーションの有効性を示すものであるといえる。硬直化モデルを定式化するにあたり、人間の心理的特性を持つパーソナリスティックェージェントを定義した。パーソナリティは、タスク執着、対人好悪感情、保守性とする。組織硬直化とは、組織業績の低下、環境変動への非適応性、情報への不信頼性として観察されるものとする。計算機シミュレーションの結果、現実の組織硬直化のメカニズムに関する興味深い数多くの知見を得ることが出来た。それらは、例えば、対人好悪感情によって組織内に派閥が形成される過程についてや、タスク選択過程において妥協が生じるメカニズム、または、タスク執着と保守性の組織業績に関する相殺作用などがある。これらは隆盛しつつある社会情報システムの構築や運用に対して意義深い示唆を与えている。

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