著者
村中 孝司 鷲谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.51-62, 2003-08-30
参考文献数
24
被引用文献数
13

鬼怒川中流域の河原における侵略的外来牧草シナダレスズメガヤ(Eragrosis curvula)の分布拡大を,野外調査および発芽実験によって把握した生態的特性にもとづき,モデルシミュレーションによって予測した.発芽実験からは,成熟種子は特別の休眠を持たず,永続的土壌シードバンクをつくらないことが示唆された.実際に河原においては,種子分散直後の8-9月に多くの発芽した実生が認められた.それらのデータにもとづき,格子内の個体群動態を推移行列で記述し,格子間での種子分散パターンについても実測データをもとに記述したモデルによって経年的な分布拡大を予測した.まだ空地の多い侵入初期には,毎年シナダレスズメガヤの占有面積はおよそ3.31-4.14倍に増加することが予測され,およそ10年で全体の50%を占有し,12年で河原一帯を占有することが予測された.河原の固有の植物と生態系に及ぼすシナダレスズメガヤの影響を回避するためには,侵入初期のうちにシナダレスズメガヤを機械的に除去し,礫質の河原を回復させる対策が緊急に必要である.

言及状況

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