著者
文沢 義永
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.176-186, 1971-09-30

1.日本の神話伝説については,従来,文献学,倫理思想史,神話学の立場から論究されてきたし,最近は文化人類学の立場から研究されつつあるが,心理学的立場からの研究はきわめて少ない。2.日本の神話伝説についての意味づけ,受けとめ方を心理学的に研究するとしても,具体的にはどんな側面をどんな方法で行なうかについて,まだ十分に論議されていない。本研究では,一般的な日本神話の概念を自由記述式の質問紙法,Semantic Differentia1法,因子分析法によってデータを収集し分析した。3.自由記述式質問紙法によると,現代の小中学生は神話物語についての知識が貧弱であり,それに対する感動性も弱い。神話物語を現実性や合理性の立場から受け取ろうとする傾向があり,男子よりも女子の方はその物語を読もうとする関心が高いようである。4.日本の神話伝説についてrelevantに表現すると思われる形容語句を46対選定し,この尺度上にそのイメ一ジを7段階で,高校生,大学生,一般成人に評定させた。その結果に基づいてセマンティック・プロフィールを描いてみると,一般に大学生は日本の神話を否定的な方向に受けとり,高校生と一般成人は肯定的な方向に受けとっている。男女の差では大学生よりも高校生の方が著しいことがわかった。5.大学生グループと高校生グループの形容語対に対する回答データについて因子分析してみると,第I因子幸福性第II因子伝統性第III因子活動性と神秘性第IV因子複雑性と真実性第V因子親近性の5因子が算出された。6.日本の神話伝説についての心理学的な研究の意義および研究方法論について考察を加えた。日本の精神的文化遺産として神話に親しみを愛情をもち続けることが,日本人らしい倫理的情操につながることであろうと思われる。

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