著者
前田 多美
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.166-170, 1980-06-30

本研究の目的は,概念的特異性課題を用いて,幼児(5歳児)の概念形成過程においてHouseらの注意モデルが妥当であるかどうか,また,特異性課題が概念形成課題としても利用できるかどうかを検討することであった。そのために,概念的特異性課題を行う前に注意モデルにおける第1位相を訓練する群(概念訓練群)と第2位相を訓練する群(特異性訓練群)を設け,後の本課題(概念的特異性課題)における遂行成績を,訓練を行わない統制群の成績と比較した。その結果,本課題における基準達成までの試行数(基準試行を含まない)を指標にすると,特異性訓練群,概念訓練群はともに統制群より有意に試行数が少なく,成績が良かった。しかし,特異性訓練群と概念訓練群との間には有意な差は認められなかった。また,基準達成までに要した試行数が0, 1∼15, 16∼60試行の3つの場合に分けて,各々に属する各群の被験者数によって比較すると,3つの群各々の間に有意な差が認められ,概念訓練または特異性訓練を行う方が訓練を行わない場合よりも本課題の遂行成績は良くなり,またその効果は概念訓練よりも特異性訓練の方が大きいことが明らかにされた。さらに,本課題において10試行を1ブロックとして試行ブロックごとの各群の正反応数を指標として,3(訓練タイプ)×3(試行ブロック)の混合型分散分析を行った。その結果,訓練の主効果および試行ブロックの主効果が認められ,どの試行ブロックにおいても特異性訓練群,概念訓練群は統制群よりも成績が優れていることが示された。 これらの結果から,Houseらの注意モデルは,幼児の概念学習の場合にもあてはめることができ,概念形成課題として特異性課題を用いることができると考えられた。

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