- 著者
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加藤 元和
- 出版者
- 社団法人日本体育学会
- 雑誌
- 体育學研究 (ISSN:04846710)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.2, pp.61-66, 1971-10-01
この研究では,古代オリュンピア祭典競技の起源を巡る諸問題を取り拳げた.1)歴史的事象としての古代オリュンピア祭典競技は,神話,伝承に於ける神々や英雄たちの競技の世界やホメロスの詩篇オデユツセイアやイリアスに於ける競技の世界の延長として出現したのでなく,それら三者の間には,密接な相互関係があった. 2) ゼウス崇拝とオリュンピア祭典競技との結びつきは,エリス人のゼウス崇拝とピザ人のべロプス崇拝及び両ポリス市民間に於けるオリュンピア祭典競技の主催権を巡る対立・抗争を通して確立されてきたのである. 3) オリュンピア祭典競技の起源は,最もギリシア的国制としてのポリス共同体の存在を前提とせねばならなかったのである.それは,自由,自治,自給自足という共同体の特性が,逆に,民族的統一理念としての汎ギリシア精神の具現体としてのオリュンピア祭典競技を体制化したのである.