著者
大島 清 林基治 能勢尚志 横井義之 可世木辰夫
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.31, no.10, pp.p1853-1861,図4p, 1979-10

妊娠末期のニホンザルにDHA-S2mg/kgを静注すると,投与後3時間から6時間の間に肉眼的にも明瞭に赤色化及び膨潤の変化を認めることができる.急性的に子宮筋電図を記録した実験では,子宮体,頚管ともにDHA-Sによる収縮作用を認めず,頚管熟化は筋電図不変ということと同義であると解釈できる、妊娠ザルにDHA-S投与後,時間を追ってDHA.E_1、E_2,E_3をRIAで測定したところ,E_2は投与後6時間のところで有意の差で上昇していた.妊娠ザルではDHA-SがDHAを経てE_2に転換されたことが立証でき,これは臨床結果とも一致する.以上の結果の基礎として,DHA-S投与4時間又は6時間後の妊娠子宮頚管部を部分切除して電子顕微鏡像を調べたところ,DHA-S投与後の頚管のコラーゲン線維の合成が促進されること,又,一方で破壊も同時進行していることが推論される結果を得た.頚管のコラーゲン代謝とE_2,また酸性ムコ多糖類,ヒアルロン酸やグリコーゲン顆粒の関与など,コラーゲン新生破壊の機序は今後の基礎的研究にまって解明されなければならないが,上記の結果は,DHA-Sのサル頚管熟化作用を示唆するものであると判断される.

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