- 著者
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林 俊郎
- 出版者
- 日本産科婦人科学会
- 雑誌
- 日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
- 巻号頁・発行日
- vol.22, no.3, pp.211-220, 1970-03
妊娠ラット子宮筋の活動を, in situで筋電図学的に研究した.そして得られた筋電図のpatternについて, 周期的に発生する活動電位群の間隔, 活動電位群の放電持続, 群中棘波の発生頻度, 棘波の伝播範囲, 振幅及び速度を示標とし, 妊娠に伴う子宮筋の興奮性変化を見た.その結果, 妊娠中期, 妊娠末期を比較すると, 子宮筋の興奮性は妊娠の経過と共に漸増するのが見られる.妊娠末期では小切開を加えただけでも著しく収縮活動が亢進し, 分娩を誘発完了する.これは最下部胎嚢の内圧の変化, 切開部周囲の筋線維の伸展性が変化することによると思われ, 分娩の発来機序について示唆を与えるものである.非胎盤附着部, 胎盤附着部における活動電位の発生様式を妊娠経過に従つて, その差異を検討したところ, 胎盤附着部における興奮伝播性は非胎盤附着部に比し, 多少抑制されているようにみえるが, その他の興奮性を示す要素には相違は認められず, 胎盤による局所抑制作用を過大に評価することは難しいと結論せざるを得なかつた.estradiolを与えた家兎卵管については, その基本的収縮様式は, 卵管采部, 膨大部では弱い蠕動性収縮が頻回に現われ, 次々子宮側に伝播することが多く, 時にゆり返す様に逆伝播が起こる.しかし狭部に到ると弱い蠕動性収縮の中にtetanicな強い収縮を混じ, 子宮側に移行すれば次第に増強する.卵管子宮移行部では興奮の伝播に関して特別な障碍, 又は抑制はなく, 一方に発生した興奮は殆んど常に他方に伝播し得る.その方向は正逆いずれの場合でも起こり得るが, 本実験条件下では正伝導が多かつた.