- 著者
-
鈴木 実
- 出版者
- 日本動物分類学会
- 雑誌
- 動物分類学会誌 (ISSN:02870223)
- 巻号頁・発行日
- no.13, pp.1-4b, 1977-10-31
付着生物における相組成の特時空的変遷過程を調べる目的で日本大学能獣医学部所属下田セミナーハウス(爪木崎)前の海水中,筑波大学付属研究センター内と東京港湾内人工凪さにスライドグラスを10枚一組として上・中・下三層に分け懸吊させ1〜3カ月後に回収・検鏡を行なうという作業を毎月1回ずつ行なってみた。その間,昭和51年12月14日に懸吊し2月14日に回収した爪木崎中層からのスライドグラスと5月9日に懸吊し6月中旬に回収した爪木崎中層からのスライドグラス各1枚にTrichoplaxをそれぞれ1個体と3個体見出すことができた。この動物はGRELL(1973)により形態・発生・系統などが詳細に調べられ,その結果クラゲの幼生ではなくPlacozoaに所属する唯一の実在種で,しかも後生物共通の祖先とみなしうることなどが明かにされた。Trichoplax(センモウアメーバヒラムシ:新称)は世界的な珍奇種で飼育用水槽中以外から発見されたのは下田爪木崎が世界では2番目の記録である。