著者
高橋 裕一 松浦 敬次郎 片桐 進
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.7-15, 1987
被引用文献数
7

山形県において, 4月下旬, 農業従事者の間に花粉症様疾患が多発しているとの情報があった.その原因を探索するために, 県内各地区の8集団, 農村住民5集団1878名(20-79歳)および学生3集団1866名(12-17歳)を対象にしてアンケート調査と臨床検査, 農村部および都市部における空中花粉量の定点調査と植生調査を行った.花粉症様症状, くしゃみ, 鼻汁過多, 鼻閉, 鼻のかゆみ, 眼のかゆみおよび結膜充血などを示す患者の出現頻度は, 農村住民で約10%, 学生集団で約5%であり, 患者の大部分は, 毎年4-5月に発症していることがわかった.発症時期の明らかな患者108名について皮膚反応試験を行った.4月-5月に皮膚反応が陽性の患者の大部分は, イネ科花粉, 特にスズメノカタビラ花粉に感受性を示すものが目立った.スギ花粉に対する感受性者は予想外に少なかった.空中花粉量の月別変動をみると, スギ花粉は3月末から4月中旬にかけて飛散し, 測定地点による空中花粉量の差は認められなかった.一方, イネ科花粉は4月-6月に飛散し, 測定地点により, または農作業の前後で飛散量に大きな違いが認められた.4月下旬から5月初旬に飛散する果樹花粉においても同様の傾向があった.調査対象地域の植生をみると, 患者が多発する4月下旬には, カモガヤ, ホソムギ, ナガハグサなどのイネ科植物はまだ開花しておらず, 果樹園および田起こし前の水田にはスズメノカタビラが著しく繁茂し, 開花中であった.また, スズメノカタビラとほぼ同じ時期に開花するスズメノテッポウは, 前者に比してその数は極めて少なく, 特に果樹園ではほとんど認められなかった.これらのことから, 4月-5月に当地方の農業従事者の間に存在する花粉症患者の多くはスズメノカタビラ花粉によると考えられる.

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こんな論文どうですか? スズメノカタビラ花粉症 : 春先のイネ科植物花粉症(高橋 裕一ほか),1987 http://t.co/KoYTc9a4UJ
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